健康なんでも相談室

インスリン注射による糖尿病の治療-空腹時血糖なのになぜ高い?-

回答者:  鳥取県医師会常任理事 天野道麿

質問

62歳女性。約20年前より糖尿病になり、現在インスリン注射をしています。インスリンは毎食前30分に速効型を、就寝前に中間型を打っています。血糖自己測定をしており、血糖値をノートに記載しています。自分の家で検査した朝食後の血糖よりも、病院で検査した空腹時血糖の方が高くなっていて、不思議に思うことがあります。血糖自己測定の方法に問題があるのでしょうか。

回答

病院で空腹時血糖を検査する場合は、午前9時ごろになります。しかし、日常生活で朝食を午前9時にとられる人は少ないと思われます。前日の夕食の後、午前9時まで何も食べずにいても、血糖は午前2時~4時を最低値として、午前8時~9時をめがけて上昇してきます。特にインスリン使用中の人は、その傾向が著しく増幅されます。

これは、体内時計の働きにより、夜間にインスリンの作用に拮抗するホルモンが分泌される結果、肝臓に貯蔵されていたブドウ糖が血中に放出されるために起こります。この現象は糖尿病でない人にも認められますが、糖尿病のある人では顕著に現れます。

これらの理由により、空腹時血糖の方が高くなっても不思議ではありません。就寝前に中間型インスリンを打つ目的は、夜間のインスリン基礎分泌を補うだけだなく、翌朝の血糖をコントロールすることにつながります。