健康なんでも相談室

「高齢者の股関節部激痛」-整形外科的疾患以外の可能性もあり-

回答者:  鳥取赤十字病院第一整形外科部長 福島 明

質問

86歳、男性。去年の秋にいすに腰掛けていたとき、左股関節に突然激痛がはしり、約10秒でおさまりました。数日後にも同様の痛みがあり、経皮吸収型消炎鎮痛剤を貼り、痛みは軽くなりました。

近くの診療所を受診したところ、レントゲン写真では異常なく、血液の流れも順調で、内臓も大丈夫なので原因は不明と言われました。その後、強い痛みはありませんが原因は何でしょうか。今後再び痛みが出る可能性がありますか。

回答

股関節に痛みを生じる疾患は多数ありますが、高齢者に多くみられるものは変形性股関節症、偽痛風、慢性関節リウマチ、化膿性関節炎などです。そのほか大腿骨頭壊死、骨軟骨腫症、関節内遊離体や転倒、つまずくなどの外傷があれば大腿骨頚部骨折も考えられます。大腿神経痛の原因となる腰椎の炎症や腫瘍、椎間板ヘルニア、脊椎管狭窄症でも痛みが出ます。尿路結石、前立腺炎などの泌尿器科疾患と鼠径(そけい)部のヘルニアリンパ腺炎も原因となります。

これらの疾患のなかには、発病当初は症状が軽かったり、はっきりしなかったりすることがあり、診察やレントゲン検査、血液検査でも異常がみつからず、発病から月日がたつにつれ少しずつはっきりした病名診断が可能となるものもあります。ご質問から今は強い痛みはないようですが、軽い痛みでも、おさまらない場合は必ず近くの医療機関で再度診察を受けることをお勧めします。