健康なんでも相談室

「多汗症」

回答者:  中部医師会員 伊藤文利

質問

27歳 女性。多汗症で悩んでいます。緊張した場合、顔、腋、腹部からもどっと汗が出るのがわかりますし、いつも手に汗を握っている状態です。血色はよくありません。血液検査を受けても問題なしといわれますが、人との握手もはばかられます。いい治療法はないでしょうか。

回答

「ひや汗」、「汗顔のいたり」、「手に汗を握る」等と汗にまつわる表現は数々ありますが、いずれも暗い印象を与えますね。が、発汗はほ乳類にとって生死を決める重要な生理作用であると理解して頂きたい。即ち、体温調節の為の温熱性発汗と交感神経支配下で興奮.感覚制御による精神性発汗の2種類があります。さて、貴女の訴えは多汗症という事ですね。多汗症には局所性(手掌、足蹠、腋下、外陰、顔など)と全身性の2種類があり、局所性の場合、幼児からの発症例では遺伝的体質によるものが多く、成人からの例は精神的情調的異常によるものが多い。掌蹠、腋下の多汗は皮膚病に合併することがあるのでご注意下さい。全身性の場合、生理的には高温、運動、精神的動揺などによって起こるものと、病的には甲状腺機能亢進症、橋本氏病などの内分泌異常や代謝異常の全身性疾患に見られます。

文面から判断して貴女の症状は全身性多汗症に当たるでしょう。貴女が受けた血液検査の内容は判りませんが、先ず、女性に多い内分泌異常疾患の有無を特に精査してもらうべきだと思います。異常があればその治療を受け、なければ生理的なものと判断する。多汗症には根治療法は無いが、対症療法は沢山あります。貴女に必要なことは貴女自身が発汗機構を詳細に聞く、知る、理解する事でしょうか。そういう信頼できる「かかりつけ医」を持ち、何でも相談出来るようになれば意外に貴女の悩みは解決するのではと思います。