六十歳過ぎの女性。肝嚢胞が原因で痛みが出現、ひどいときには息苦しくなるため、腹腔鏡を用いた手術を受けました。しかしすぐにまた水がたまってきていると言われました。完全に治すにはどんな治療法が良いでしょうか?もし開腹手術を受けるとすると後遺症は大丈夫でしょうか?
まず肝嚢胞について説明します。これは肝臓の中に液体がたまった嚢胞(ふくろ)ができる病気です。最近は画像診断(CT,MRI,超音波検査)の発達で無症状の肝嚢胞が発見される機会が多くなりました。この病気はほとんどが良性ですから症状がなければそのまま様子を見てかまいませんが、このたびのご質問にもあるように、大きくなって痛みなどの圧迫症状が出てきた場合には治療の対象となります。
問題の治療法ですが、大きく分けて①開腹による嚢胞切除あるいは開窓術(嚢胞壁の一部を切除して大きく窓を開け、たまっている液体を腹膜で吸収させる)と②超音波ガイド下(超音波で嚢胞の位置を確認しながら)に体外から嚢胞内にエタノールなどの薬液を注入して液体がたまらないようにする方法があります。身体に対する負担の程度、治療に要する期間、再発の頻度などそれぞれ一長一短があります。このたび受けられた治療法は開腹に比べて身体に対する負担の軽い、腹腔鏡を用いた開窓術と想像されます。手術後まもなく液体がたまってきたということですから、手術により開いていた窓が再び閉じてしまった可能性があります。
さて今後どうするかです。症状がなければこのまま様子を見られて結構ですが、手術前のような痛みが出るようであれば選択肢として①再度、腹腔鏡を用いた開窓術(今度はより大きく嚢胞壁を切除する)あるいは②超音波ガイド下エタノール注入療法をおすすめします。また、開腹で手術を受けられたとしても、それほど大きな後遺症は出ないでしょう。なお、嚢胞の原因には今回のような先天性と考えられるもの以外に腫瘍、寄生虫などもあり、その場合の治療法は全く変わってきます。