30歳代、女性。足のツメのことでご相談します。巻き爪ですが、痛みはありません。雑誌に「巻き爪の人は爪を伸ばすこと」と書いてあったので、伸ばしています。3年位前から足の小指のツメの色が半分変色していて、伸びても茶色のツメが生えてきます。病気ではないかと心配です。何科を受診すればいいでしょうか。
先ず、巻き爪(陥入爪)について。巻き爪の原因の多くはつま先の細い靴、深く爪を切り過ぎる深爪、指の傷などです。つま先の細い靴を履いて爪甲に圧力が掛かったり、指に小傷を作ったり、深爪をして爪甲下の柔らかい組織が盛り上がると、容易に爪甲は変形してしまいます。特に深爪は最も要注意な原因です。巻き爪になると、痛みを和らげようと深爪しがちですが、そうすると余計に柔らかい組織が爪甲の上に盛り上がり、ますます爪甲の陥入・変形が悪化します。雑誌に爪を伸ばし気味にするように、と書いてあったのはそういう理由からです。軽度な巻き爪は保存的に矯正できますが、ひどくなると手術加療を必要とする場合があります。
もう一つのご相談の爪の縦の色素線条の件ですが、察するには恐らく人種的な生理的色素沈着ではないかと思われます。爪甲の黒い縦の色素線状は有色人種では普通に見られ、黒人では過半数の人に見られるごく普通の生理現象といわれています。日本人等の黄色人種でも人口のおよそ2~10%の頻度で見られるといわれています。これは爪母(爪の根元の爪を作る部分)に存在するメラノサイトが作ったメラニン色素が爪甲に沈着するために生じ、爪のホクロのようなものです。但し、頻度的には稀なものですが、「ホクロのガン」とも呼ばれる悪性黒色腫の早期病変と非常に区別がつきにくい場合があります。
従って、成人以後になって気付かれたもので、拡大が目立ってきた爪甲の黒色色素線状、色素線状の幅が6mmを超えるもの、色素線状の色調に不規則な濃淡差が見られる、或いは異常に濃い黒色を呈しているなどの所見が見られる場合はその疑いがもたれますので、最寄りの皮膚科医へご相談いただくことをお勧めします。