健康なんでも相談室

学校検尿での蛋白尿―他の検査で異常なくても経過観察が大事です―

回答者:  鳥取県医師会理事 笠木正明

質問

19歳女性です。高校2年生時の学校検尿にて蛋白尿(+)、その後短大に入学してからも、毎年学校検尿のたびに蛋白尿(+)で、要精密検査の通知があります。高校生の時と短大入学時に、病院を受診し検査をしましたが「どこも異常なし」と言われました。尿糖・尿潜血等は陰性です。このまま様子をみていても大丈夫なのでしょうか?

回答

学校検尿での異常の中で、蛋白尿単独陽性の場合についてお話いたします。

蛋白尿は、尿中に蛋白質が出てきた状態を示す病気のサインのひとつです。通常、蛋白質は尿中にほとんど出ませんが、多くの場合腎臓の病気により蛋白尿を認めます。したがって、蛋白尿を認めるということは、将来腎機能障害が進行し腎不全(尿毒症)という状態になることもあるかも知れないというサインがでていることになります。

蛋白尿の原因を調べるために、尿検査や血液検査をするのですが、腎機能障害が進行した状態でないと血液検査等にはすぐに異常がでませんし、また自覚症状も認めないのでやっかいなものです。血液検査で異常がないといっても安心はできません。

蛋白尿の原因を診断してゆくためには、診察や検尿を数回行うことで一過性なのか持続性の蛋白尿なのかをまず決めます。発熱・運動・尿採取時の汚染(生理中)などで認める一過性の蛋白尿はまったく心配ありません。持続性蛋白尿の場合でも、運動時や起立時に認められる体位性(起立性)蛋白尿は予後が良いとされ心配ありません。

持続性の蛋白尿を認めるものの中では腎炎によることが多く、蛋白尿の程度が強い時や血尿を伴っている時、血液検査で腎機能などの異常を認める時は、腎生検(腎臓の組織検査)などの詳しい検査が必要なこともあります。もし蛋白尿の程度が軽い時で血液検査などに異常がない場合は、経過を観察し蛋白尿が持続増悪する場合には腎生検を考慮します。腎生検にて確定診断を行い、必要に応じて治療を行うことになります。しかし、蛋白尿はそのうち自然に消失してしまうこともあります。

蛋白尿が出ているだけでは、すぐに治療の対象になりませんし、治療する必要もないこともあります。他の症状や血液検査に異常がなくても蛋白尿の経過(持続性?増悪?他の所見は?)をみる必要があります。それらのことも含めて、かかりつけの医師と相談され経過をみてもらってはいかがでしょう。