75歳、女性。20年前から、嗅覚がなくなりました。食品の腐敗臭に気付かない、ガス漏れや電気のショートであわやということがありました。嗅覚の障害は身体障害者扱いにならないでしょうか。
鼻孔(びこう)の奥には鼻腔(びくう)という空洞があり、その天井の一部に嗅粘膜という組織があります。鼻孔から入ったにおいの素は、この嗅粘膜に付着し、その刺激が嗅神経を経て、大脳に送られて、においを感じます。
この経路のどこかに障害があると、においを感じなくなり、これを嗅覚障害といいます。程度と部位、原因を診断して治療します。早期に治療を開始すれば、よくなることもあります。しかし、この方のように20年も経っておれば治療の効果はないと思います。
ご経験のように、嗅覚障害では日常生活で多くの危険が生じます。危険を防止するために、ガス検知器や火災報知器の設置や食品には購入日を記入するなどの気配りが必要と思います。
身体障害者の認定は、身体障害者福祉法という法律に基づいて行なわれます。身体障害者福祉法は、身体障害の範囲を別表で定めておりますが、残念ながら嗅覚障害はその範囲に入っておりません。
嗅覚以外にも視覚、聴覚、味覚、触覚などの感覚があります。嗅覚の障害ばかりにとらわれず、残っている他の感覚を使って生活を楽しもうとする発想の転換も必要ではないでしょうか。