保健の窓

PM2.5の健康への影響とその対応

鳥取大学医学部附属病院 呼吸器内科・膠原病内科 講師  渡部仁成

PM2.5の健康への影響

 PM2.5とは、大気中に浮遊している2.5μm以下の小さな粒子のことです。発生源は工場の煙や自動車の排気ガスなどの人為起源のもの、また、火山灰や森林火災などの自然起源のものがあります。さらに、大気中に排出された硫黄酸化物や窒素酸化物、VOC(揮発性有機化合物) がオゾンと反応し粒子化することでPM2.5となります。ヒトが吸入したPM2.5は、粒子径が2.5μmのものでは約5%が肺に沈着し、粒子径が小さくなるほど沈着する率は高くなります。体内に取り込まれたPM2.5はヒトの健康に様々な影響を与えることがわかっています。 2013年に国際がん研究機関(IARC)はPM2.5に発癌性があることを認定し、5段階のリスク評価の中で最も危険度の高い“グループ1”に分類しました。欧州の約31万人を対象に解析した研究では、 PM2.5が5μg/m3増加すると肺がんリスクが18%上昇することが明らかになっています。

 

 

 

PM2.5の健康への影響

 PM2.5はアレルギー疾患にも影響します。3,863名の新生児を対象に8歳まで追跡調査した研究では、1歳児で6%が喘息を発病しその後1年ごとに1~2%で喘息が発病していましたが、PM2.5は喘息発病の原因となっていました。喘息の方がPM2.5の平均濃度が28.3μg/m3の幹線道路沿いを歩行した場合には、PM2.5の平均濃度が11.9μg/m3の公園を歩行したときに比較して呼吸機能が明らかに低下していたことが報告されています。鳥取大学医学部附属病院呼吸器内科が401名の小学校児童の方を対象に行った調査ではPM2.5は児童の呼吸機能低下をさせていました。PM2.5は長期曝露によって肺がんや喘息の原因となるだけではなく、短期曝露でもヒトの呼吸機能に影響します。 PM2.5に対する対応では、病気の治療をきちんと受けることが最も重要になります。また、WEB上で確認できる大気汚染物質濃度の現在の情報を有効に活用し濃度が高いときには外出を控えるなどの対策をとることも有用です。 しかしながら、現在の日本のPM2.5のレベルで過剰に反応する必要がないことは知っておくべきです。