保健の窓

知っておきたい前立腺の病気

鳥取市 吉野・三宅ステーションクリニック 中村勇夫

 

 

 前立腺は尿をためるぼうこうの下にある栗の実くらいの大きさの臓器です。ぼうこうにたまった尿は尿道を通って体外に出ますが、この尿道が前立腺の中を通っています。そのため前立腺に異常が起こると、頻尿などの排尿トラブルが起こります。この前立腺に起こる知っておきたい病気として、前立腺炎、前立腺肥大症、前立腺がんがあります。

 前立腺炎には急性炎症と慢性炎症があります。急性前立腺炎は細菌感染が原因で、高熱、排尿痛などの症状が見られ、早急な治療が必要です。慢性前立腺炎の症状は下腹部や会陰部(えいんぶ)の不快感や痛みです。慢性前立腺炎は原因が不明なことが多く、治療が長期間に及ぶ場合があります。

 前立腺肥大症は文字通り前立腺が肥大する病気です。前立腺は50歳を過ぎると加齢とともに肥大する傾向があり、高齢化が進む日本では今後患者数が増加することが予想されます。

 主な症状は頻尿や排尿困難ですが、進行すると、時に尿意を感じても尿が出ず、緊急に受診が必要となることがあります。治療はまず薬物療法ですが、改善がない場合は手術をします。近年、内視鏡を用いた体に負担が少ない新しい手術方法が普及してきました。

 前立腺がんは、現在男性が罹患するがんの中で、部位別統計第1位のがんです。前立腺がんは早期の場合無症状ですが、血液検査で「PSA(前立腺特異抗原)値」を測定することで早期発見が可能です。5年生存率は99%以上ありますが、進行すると骨に転移しやすいがんです。

 治療には監視療法、薬物療法、放射線療法、手術療法があります。PSA値測定はどの医療機関でも実施できますので、気になる方はかかりつけ医に相談することをお勧めします。