夏本番を迎えました。6月1日から、職場でも熱中症の恐れがある作業者を早期に発見するための体制整備を義務付ける労働安全衛生規則の改正が施行され、広く注意喚起が図られています。熱中症は、湿熱のため熱を放散する汗が蒸発しにくく、体に熱がこもり、めまい・頭痛・こむらがえり・吐き気や嘔吐などの症状が見られます。
暑さで体力を消耗すると、典型的な夏バテに陥ってしまいます。漢方医学では夏バテのことを「注夏病」といい、酷暑と高い湿度の影響で「脾胃」と呼ばれる消化機能の働きが損なわれるために起こると考えられています。
過剰な冷たい物の摂取も脾胃に負担をかけ、人の生命活動のエネルギー(車ではエンジン)である「気」を作り出す脾胃が弱ります。暑さによるストレスから気を消耗し「気虚」となった結果、食欲低下や消化不良・倦怠感などが見られます。外気温と冷房との温度変化に体温調節がついていかず、寝汗や動悸、変な寒気・寒熱の偏在などの症状が見られる「自律神経失調型の夏バテ」もあります。
では、この酷暑を乗り切るにはどうしたらよいのでしょうか。漢方薬は暑さにまつわる諸症状は得意分野の一つとされており、主に胃腸機能を高めて気力を養う(補気健脾)処方や体の水分代謝を整える処方が用いられます。
中国語で「苦夏」は夏バテのこと。夏バテには苦味が効果的で、緑茶・麦茶・ゴーヤなどの苦い物を適度に取ることで暑気を払い、余分な湿気を取り除きます。トマト、キュウリ、ナス、レタスなども体熱を冷まします。補気健脾作用のある豆類、甘酒、みそ、オクラ、 山芋、カボチャ、タコ、鶏肉、もち米などもお勧めです。
夏のさまざまな不調を長引かせないようにするためにも、漢方薬も取り入れてみませんか。次の季節を健やかに過ごすには、今の季節にきちんと養生することがとても大切なのです。