保健の窓

実は身近な肝臓がん

鳥取赤十字病院 消化器内科 松木由佳子

 

 

 原発性肝がんのほとんどが肝細胞がんです。長らくB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)に関連した発がんが多くを占めてきました。自治体で行われるがん検診の中に肝がん検診はありませんが、それに相当するものは肝炎ウイルス検査です。HBV、HCV感染は肝細胞がんの高リスク群になるからです。

 近年は抗ウイルス薬やワクチンなどの医療の発展に伴い、肝がん患者さんの背景疾患の割合も変化し、ウイルス性が減少し、アルコール性肝疾患、脂肪肝、糖尿病など生活習慣に関連するものが増えています。鳥取県はHBV検査陽性者が全国平均よりも高く、アルコール摂取量も中国5県の中では最も多いです。そのためか、肝がんの死亡率は全国平均を上回っています。

 肝臓は沈黙の臓器と言われ、肝がんで症状が現れるのはかなり大きくなってからです。自覚症状によらず、定期的な腫瘍マーカー測定と腹部超音波検査などの画像検査の両方を行うことで早期発見につながります。

 早期で発見できれば、根治を目指せる疾患です。検診や医療機関等で肝炎ウイルスを受けることから始めてみてください。治療効果が高く副作用の少ない抗ウイルス薬が使用できるようになっていますので、HBV、HCVとも多くの場合制御可能です。また、HBV、HCVの治療中あるいは治療後、陽性と言われたことのある方はぜひ定期的な検査受診を継続してください。

 一般的な検診では肝がんの腫瘍マーカーや腹部超音波検査は含まれません。生活習慣病や肝機能異常を指摘されたことのある方も、かかりつけ医での診療や人間ドック等を活用し、定期検査を受けられることをお勧めします。