骨粗しょう症は骨折の危険性が高まり、要介護や寝たきりとなることが知られています。特に50歳以降の方は何もしないとその後の人生で5人に1人が骨折をしてしまいます。
背骨の骨折は、5人中3人は痛みを感じない「いつの間にか骨折」です。痛みがないからと気が付かないでいると、その後の1年間で別の部位を骨折することになります。これを「ドミノ骨折」といいます。
これまで骨の強さはカルシウム=骨密度と言われてきました。そのため、治療では骨密度を増加させる薬剤が使用されます。しかし、最近の研究から骨の強さは「カルシウム=骨密度さえ高ければ骨は強い」という概念は十分ではないことが明らかになりました。
骨は鉄筋コンクリートの建造物によく似た構造を持ち、鉄筋に相当するのがコラーゲンで、コンクリートに相当するのがカルシウムです。隣り合うコラーゲン同士をつなぎ留める梁のような構造体が骨強度を規定することを独自に開発した装置で、世界で初めて明らかになりました。
鉄筋に相当する骨の中のコラーゲンの梁がさびてしまうと、たとえコンクリートであるカルシウムが十分でも骨折してしまうのです。コラーゲンのさびは、年齢とともにたまります。さらに生活習慣病(動脈硬化、糖尿病、腎機能低下)を患っている方は、さびが人並み以上にたまって骨密度が正常値でも骨折してしまいます。
このように、骨密度が正常値でも骨折してしまうタイプをどのように見分け、予防・治療していけばよいのかも明らかにしてきました。これらの内容は、骨粗しょう症の予防と治療のガイドラインや生活習慣病骨折リスク診療ガイドに掲載されています。