保健の窓

「鼻づまり」で困ること

鳥取赤十字病院 院長 耳鼻咽喉科部長 竹内裕美

 

 

 「鼻づまり(鼻閉)」は、風邪や花粉症などの鼻の疾患や飲酒などによる鼻の粘膜の腫脹が原因となって生じる誰でも経験する鼻の症状です。一時的な鼻づまりは健康に大きな影響はありませんが、慢性的な鼻づまりは健康に悪影響を及ぼします。

 主な鼻の機能は空気の通り道(気道)と嗅覚ですが、その他にもナ行・マ行などの構音や脳の冷却、免疫機能など多くの機能があります。

 鼻の気道としての機能には、吸気に含まれる小さな異物を除去したり、吸気の湿度や温度を調節する機能があります。この機能によって鼻腔を通った空気は気管や肺にとって刺激の少ない優しい空気となります。

 鼻づまりがひどくなると口呼吸をするようになりますが、口呼吸では除塵・加温・加湿の利点が失われますし、口やのどの乾燥による粘膜や歯牙への悪影響を生じます。また、睡眠時に口が開くことで舌が後方に落ち込みやすくなり、睡眠時無呼吸症候群の原因にもなります。

 風邪などで鼻がつまると、におい成分が神経に届かなくなり、嗅覚障害を生じます。鼻の病気による鼻づまりは嗅覚障害の50%を占めます。この場合、鼻づまりが治れば嗅覚は戻りますが、風邪が治った後でも嗅覚障害が続くことがあります。これを感冒後嗅覚障害と呼び、嗅覚障害の約20%を占めます。新型コロナ感染症では初期症状として嗅覚障害を生じることが注目されましたが、感染症が治った後も続く後遺症としての嗅覚障害がこれに当たります。

 鼻づまりは、呼吸や嗅覚のほかにもいろいろな障害を生じます。鼻づまりが長期間続く場合やその他の鼻症状を伴う場合には、耳鼻咽喉科を受診してください。