保健の窓

頻尿と尿失禁

鳥取県立中央病院 泌尿器科 部長 川本文弥

~皆が悩むトイレの問題~ 

 

 年を重ねるにつれ多くの方が悩む「頻尿」と「尿失禁」。確かに「年のせい」という面もありますが、医療機関を受診すると、症状の改善につながることも少なくありません。

 数カ月以上の長期間にわたって続く頻尿の代表的な疾患として、過活動膀胱があります。これは単に尿の回数が増えるだけではなく、急に尿意を感じトイレに急いで行きたくなる尿意切迫感もあわせてみられます。

 また、トイレまで間に合わずに漏れてしまう切迫性尿失禁も過活動膀胱でしばしばみられます。内服薬で治療されることが多いですが、3カ月以上適切な治療を続けても症状が改善しない難治性の方もおられます。

 最近は、難治性過活動膀胱に対するさまざまな治療法が開発されており、一部の泌尿器科では積極的に取り組んでいます。一方で、頻尿だと思っておられても、実は尿が出にくくなっている場合もあり、注意が必要です。

 切迫性尿失禁の他にも、息んだり、せきやくしゃみで漏れてしまう腹圧性尿失禁という、尿漏れもあります。これは女性に多くみられるタイプの尿失禁で、特に高齢の方や複数回の出産を経験された方に多くみられます。

 主な要因は、内臓をおなかの一番下で支えている骨盤底筋が弱くなることだと言われています。症状が軽い場合、骨盤底筋体操が簡単にできる有効な対策ですが、正しく体操することと、長期間継続していくことが必要です。また、筋力の低下が主な原因ですので、内服薬の治療にも限界があります。症状が重い方には、身体への負担の比較的少ない手術をお勧めすることもあります。