保健の窓

実は身近なパーキンソン病

国立病院機構鳥取医療センター 院長 高橋浩士

 

 

 パーキンソン病は65歳以上では100人に約1人と高齢者では非常に多く、高齢化とともにますます増えてきている病気ですが、「歳のせい」と見過ごされていることも多いのが実情です。動きが遅くなる(無動)、肩、膝、指などの筋肉がかたくなって、スムーズに動かしにくい(筋強剛)、何もしないでじっとしているときにふるえる(振戦)などの症状が出ますが、早期は特に診断が難しい病気です。

 また、パーキンソン病では、このような動きの障害(運動症状)だけでなく、非常に早い時期から便秘、立ちくらみ、睡眠の障害などさまざまな非運動症状が出ます。そのため最近では、脳だけの病気ではなく、全身の病気と捉えられるようになっています。

 パーキンソン病の運動症状は、体の動きを調節するドパミンと言う脳内の物質が足りなくなることによって起こります。パーキンソン病でドパミンを作る神経細胞がどうして減っていくのかは十分わかっていないため、完全に病気を食い止める治療法はまだ開発されていませんが、不足しているドパミンを補充するお薬やドパミン補充と同様の効果をもつお薬が多数あるので病気と長く付き合っていくことができます。

 近年では、薬物療法だけでなく、早期のパーキンソン病に対して効果のあるリハビリテーションの方法や、進行期に対するデバイスを用いた治療法など、さまざまな治療法が開発されています。今回は受診につながるパーキンソン病に気づくきっかけから診断、治療への流れや、治療薬やリハビリについてお話ししようと思います。