保健の窓

食道がんの話

鳥取県立中央病院 消化器外科 部長 建部 茂

~食道がんと言われたら~

 

 がんは1980年代より脳卒中、心臓病を抜いて日本人の死因の第1位を占め、がんによる死亡者数は年々増加しています。現在のところ一生涯でがんにかかる率は2人に1人(男性65%、女性50%)で、がんで亡くなる率は男性で4人に1人(26.7%)、女性で6人に1人(17.9%)となっています。日本人に多くみられる肺がんや胃がん、大腸がんと比べると、食道がんにかかる率は高くはありませんが、年間約1万人の方が亡くなっています。食道がんはかかる可能性は高くないものの、治りにくいがんと言えます。食道はのどと胃をつなぐ管状の臓器で、のどの食べ物が入ってくる場所から始まり、首、胸、腹を通って胃につながります。読んで字のごとく、口から入った食べ物を胃に運ぶ通り道です。また、食道は頸動脈、気管、気管支、甲状腺、大動脈、心臓、肺などの生命の維持に大変重要な臓器に囲まれています。食道がんの手術は難易度が高いのですが、その理由として首、胸、腹の三つの領域にまたがっている(首、胸、腹の3カ所の手術を行わなければならない)ことと、前述のような重要臓器に囲まれており、精緻な手術操作が必要であることが挙げられます。日本全国の医療情報を収集しているデータベースを運用する団体であるNational Clinical Database(NCD)に登録された食道がん手術症例(16,752例)を検討したところ、日本食道学会が認定している「食道外科専門医認定施設」で手術を受けた患者さんの手術成績は、非認定施設と比較して有意に良好な結果が出ています。食道がんの治療を受けるにあたっては、食道外科専門医のいる病院で治療を受けることが重要です。