保健の窓

科学的に正しい認知症予防

鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座 教授 浦上克哉

~認知症を予防しよう~

 

 認知症は長年にわたって原因も分からない、治療法もない、予防の可能性はゼロと考えられてきた。しかし、近年原因となる蛋白や遺伝子が解明され、疾患修飾薬(根本治療の可能性を持つ薬剤)も開発されてきている。予防に関しても、発症に関わる危険因子の約40%は修正可能であることが報告された。

 認知症は一つの病気ではなく、認知症をきたす原因疾患は約100種類くらいある。ただ、頻度が多いのはアルツハイマー型認知症、血管性認知症の二つで約8割を占める。2番目に多い血管性認知症は発症の原因が以前から解明され、予防できる認知症と位置付けられていた。1番多いアルツハイマー型認知症はアミロイドβ蛋白が原因蛋白であることが分かり、アミロイドβ蛋白をたまらないようにする、あるいはたまったアミロイドβ蛋白を除去するような治療や予防対策が報告されている。

 認知症予防の最も重要な対象者は、軽度認知障害(MCI)である。MCIは正常と認知症の移行状態で可逆的な状態であり、このタイミングで予防介入を行えば正常に回復する可能性がある。「とっとり方式認知症予防プログラム」は科学的に予防介入の効果を実証したプログラムであり、運動、知的活動、コミュニケーションの三つの予防対策として良い要素が盛り込まれている。運動は、有酸素運動だけでなく筋力運動、ストレッチをバランス良く組み合わせてある。知的活動は頭を使って指先を動かす活動であり、具体的には記憶トレーニング、クロスワードパズル、塗り絵、折り紙などがある。コミュニケーションは特定の人だけでなく多くの人との会話ができるように配慮している。