保健の窓

中高年女性の健康と婦人科がん

鳥取県立厚生病院 院長 皆川幸久

更年期以降の女性と肥満

 

 女性の一生の中で、卵巣ホルモン(一般にはエストロゲン)の分泌減少から枯渇に至る時期を更年期と呼び、50歳前後から生じる自律神経症状を中心とした多彩な症状を更年期障害と呼びます。この時期は生活習慣病が問題になり始める時期にも一致します。老年期に向かうに従いこれらの症状が落ち着いてくる一方で、尿失禁や大腿骨頚部骨折の原因となる骨粗鬆症など女性で特に問題になりやすい状況を生じてきます。これらをすべてエストロゲンの不足で説明できるものではありませんが、女性の場合はそれを意識した健康管理が必要と思われます。特に注目すべきは更年期以降の女性によくみられる体重増加です。卵巣からのエストロゲン分泌不足を補うために脂肪組織が主な供給源となるために、個人差はあるものの閉経前後からの女性には生理的に(必然的に?)肥満に陥りやすい身体変化を生じてきます。肥満は生活習慣病の素地になるばかりでなく、増加しつつある子宮体がん、乳がんの誘因となることも問題です。ダイエット食品の開発、健康番組の増加で毎日のように耳にする言葉ですが、更年期以降の女性が注意すべきは体重であり、肥満の予防と治療は中高年女性の健康維持に極めて重要と考えます。

 

 

肥満と子宮体がん

 

 子宮がんには頸がんと体がんがあります。頸がんはHPVというウイルス感染が主原因であり、若年層からの発見が重要で細胞診による子宮がん検診と子宮頸がんワクチンによる予防が推奨されています。一方、子宮体がんの主な原因・誘因はエストロゲン(卵巣ホルモン)の過剰状態とされており、前回取り上げました更年期以降の肥満が大きな危険因子と考えられています。肥満の予防・治療は、体がんの予防にも繋がる可能性があり、とても重要です。子宮頸がんは検診により前がん病変で発見される例が増加していることもあり、体がんの発生数は頸がんを上回っている状況です。体がんでは、初発症状として更年期前後の不正出血が大半の症例でみられることから、幸い初期がんで発見されることが多いものの、絶対数は増加しているがんの一つです。鳥取県では子宮頸がん検診の受診者の中で、50歳以降で不正出血を自覚される方に体がん検診をお勧めしています。移動車検診では細胞採取の際に痛みを伴うことがあること等の理由で行いませんが、施設検診では必要に応じて実施しています。肥満の予防・治療と閉経前後からの不正出血への注意で体がんの予防と早期発見に心掛けましょう。