保健の窓

50歳を超えたら知っておきたい前立腺の病気

鳥取県立中央病院 泌尿器科 村岡邦康

前立腺肥大症について

  前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下にあり、尿道をぐるりと取り囲んでいます。精子を活性化する働きがある前立腺液(精液の一部)を分泌する働きがあります。正常な前立腺の大きさはクルミ大(重さ約20g)ほどですが、50歳を過ぎたころから多くの男性が加齢とともに肥大します。

前立腺肥大症の症状には、尿をしている間に尿が途切れる(尿線途絶)、尿の勢いが弱い(尿勢低下)、夜間に尿意で何度も目が覚める(夜間頻尿)、尿をした後も尿が残っている感じがある(残尿感)などがあります。これらは、前立腺が腫大して尿道を圧迫するもののほかに、交感神経の緊張が高まって前立腺平滑筋が収縮して尿道の通りが悪くなるものもあります。

前立腺肥大症の内服治療には、前立腺平滑筋の緊張を緩めて尿を通りやすくする薬剤と、前立腺を小さくして尿道の圧迫を軽減する薬剤の2種類があります。内服治療を行っても、症状の十分な改善が得られない場合には手術による治療を検討します。手術は開腹で行うことはほとんどなく、現在は内視鏡手術で行われます。

生活習慣が排尿障害の原因となっている場合もあります。気になる症状があればかかりつけ医にご相談ください。 

  

 

前立腺癌について

 毎年全国で約8万人、鳥取県では約500人の男性が、前立腺がんと診断されています。

前立腺がんを診断するためには、PSA検査、MRI検査、前立腺生検などを行います。PSA値は前立腺以外の臓器の病気では高くなりません。PSAが高値の場合、前立腺がん以外に、前立腺肥大症、前立腺炎、排尿困難などが考えられます。どの部位にがんを疑う病変があるのかを正確に評価するためにMRI検査を行い、この所見に基づいて前立腺生検を行い、採取した組織を顕微鏡で観察して診断します。

もし前立腺がんが見つかった場合は、がんの進行具合、PSA値、がんの悪性度、患者さんの年齢や体力などを考慮して治療選択をおこないます。前立腺がんの治療には、手術、放射線治療、ホルモン療法、抗がん剤治療などがあります。手術は、前立腺内にとどまっているがんを完全に摘除することを目的に行います。現在、ロボット支援腹腔鏡下前立腺摘出術が広く行われており、体への負担が少ない治療になりました。ホルモン療法は、抗がん剤と違って大きな副作用は比較的少なく、高齢者の方にも負担が少ないです。

50歳をすぎたら人間ドッグや定期健診でPSA検査を受けることを薦めます。