保健の窓

糖尿病がもたらす視力障害

鳥取市立病院 眼科 金道寛弥

全身的な影響を及ぼす糖尿病

  平成28年に施行された「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)では、20歳以上の「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は男性18.1%、女性12.1%であり、依然として糖尿病の罹患率は高く推移している。また年齢が上がるにつれて罹患割合が増加し、70歳以上の男性では、4人に1人で糖尿病が強く疑われる結果となった。また糖尿病は、全身性に影響を及ぼし、主な合併症として①網膜症②腎症③神経障害④血管障害が報告されている。視力低下、慢性腎不全、脳梗塞、血行障害など、全身機能の低下に至るとQOLが著しく損なわれる。

実際の眼科診療では、糖尿病網膜症の各ステージで異なる治療が行われているが、すべてのステージで共通していることは継続した診療が必要になる点である。治療の自己中断により、視力低下が不可逆な段階まで進行することを防ぐためには、糖尿病患者本人にも継続診療の必要性を理解していただく必要がある。また、糖尿病の影響を知ることで、原疾患の治療意欲の上昇につながると思われる。  

 

 

失明につながる糖尿病

 日本の生活習慣病の1つである糖尿病には、全身的な合併症の1つとして網膜障害が合併する。罹患に伴い糖尿病網膜症が進行した網膜では血管障害により眼底に著名な虚血と出血をきたすことがわかっている。この状態を放置したままでいると網膜に不可逆的な萎縮が生じて最終的には著名な視力低下につながる。糖尿病疾患に合併する網膜障害は1990年代の日本の失明原因の1位をであった。2000年代に入っても、失明原因に2位に位置しており、失明原因の約19%を占めている。(厚生労働省、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業)網膜症の根本的な治療が、原疾患である糖尿病のコントロールであることは言うまでもないが、現在硝子体手術、網膜光凝固術(レーザー治療)、硝子体注射など眼科的な治療の選択肢も多い。しかし、どの治療も限界があり、適切な治療時期を逃すと視力の回復の見込みは低い、患者個人が自身の眼に関心を持ち、治療を継続することが重要である。