保健の窓

緑内障ってどんな病気?

鳥取県立中央病院 眼科部長 川口亜佐子

自覚症状なく進行

 緑内障は視神経が障害され見える範囲(視野)が欠けていく病気です。多くの場合、視野の障害は緩徐に進行するため自覚症状が出にくく、健診や他の病気で受診した際に偶然発見されることがほとんどです。40歳以上の約5%という高い頻度で認められ、危険因子として眼圧が高い、家族に緑内障の方がいる、高齢、強度近視があげられます。

眼球の前方にある前房は房水という液体で満たされており、眼圧は房水の作られる量と出ていく量のバランスによって維持されています。このバランスが崩れて眼圧が高くなると視神経が圧迫されて傷つき、視野障害が現れます。ただし視神経の強さは人によって異なり、眼圧が正常でも視神経に負担がかかって緑内障になる人がいます。このような緑内障を正常眼圧緑内障といいますが、日本人ではこのタイプの緑内障が一番多く、緑内障全体の約7割を占めています。

どのタイプの緑内障も、眼圧を下げることが有効な治療になり、主に点眼薬による治療を行います。障害された視神経や視野は元に戻らないため、早期に発見し、治療を開始して出来るだけ進行を抑えることが大切です。40歳を過ぎたら眼科の検診をうけるようにしましょう。

 

 

毎日正しく点眼を

 現在、緑内障に対して唯一有効性が確認されている治療は眼圧を下げることです。眼内の房水の量を調節して眼圧を下げ、視神経にかかる負担を減らし視野が欠けるスピードを緩やかにします。一般的にまず点眼薬で治療を開始します。点眼薬の作用は房水の産生を抑えるもの、排出を促すものに分けられ、1種類の点眼薬から開始し効果が不十分な場合は点眼薬を変更したり、作用の異なる点眼薬を数種類組み合わせます。正しく点眼できていないと薬の効果が発揮できず、副作用が生じることがあります。①毎日定められた回数どおり行う②点眼は1回1滴③点眼後は静かに目を閉じ目頭を圧迫する④複数の点眼薬を使用するときは5分以上の間隔をあける、などに注意して使用しましょう。

多くの場合は点眼薬のみで治療することが可能ですが、眼圧が十分に下がらなかったり視野障害が進行する場合は、レーザー治療や手術を行います。手術は房水の排出口の通りをよくする流出路再建術と、房水を結膜の下に逃がす濾過手術があり、後者のほうが眼圧下降作用は大きいですが侵襲も大きく、術式は病状にあわせて選択します。数年すると眼圧が上昇してくる場合もあり術後も定期的な管理が必要です。