保健の窓

ぜんそくと上手につき合うために

鳥取県立中央病院 呼吸器内科医長 中﨑博文

気管支喘息は慢性疾患

 「ぜんそく」は正式には気管支喘息といい、発作時にはヒューヒュー・ゼーゼーとした呼吸音や息苦しさ、咳など様々な呼吸器症状が現れます。気管支喘息の特徴として、非発作期と発作期があります。非発作期は症状が全くないもしくはごく軽微であるため、「気管支喘息が治った」と思われる方も多いですが、ここが気管支喘息治療の落とし穴であり、治療を中断すると発作が再燃することがしばしばあります。これは、気管支喘息が慢性的な気道の炎症を起こしている疾患であるためで、非発作期にもある程度の気道炎症が存在しています。炎症をいかに長く落ち着かせていられるかが気管支喘息治療の鍵となります。

 発作期になると前述の呼吸器症状が出現し、気管支喘息発作の状態になります。実は、呼吸器疾患であるとともにアレルギー疾患でもありますので、花粉症や動物の毛、さらにはダニやカビなどを吸い込むことでも誘発されますし、また、風邪や喫煙、気候、ストレスなども発作の原因になります。

非発作期の治療が不十分だと発作と寛解を繰り返すようになり徐々に非発作状態に戻りにくく、難治性喘息へ移行していきます。次回は気管支喘息の治療についてお話します。

 

 

非発作期の治療が大切

 今回は気管支喘息の治療についてお話します。

気管支喘息の治療は大きく2つに分類されます。発作を鎮める治療と発作を起こさないようにする治療です。

発作を鎮める治療は主に気管支拡張薬と副腎皮質ステロイドを使用します。ステロイドは非常に強い抗炎症作用があり、気道炎症を鎮めて気道を拡張させるため気管支喘息発作の治療に非常に有効です。副作用を心配される方もあると思いますが、基本的に短期間の使用ですのでほとんどその心配はありません。

気管支喘息の治療で重要なのは発作が起こっていないときの治療です。症状がほとんどないために治療を中断してしまう患者さんも多いのですが、吸入ステロイド薬などの使用を続けることで、発作が起こりにくい状態を維持していきます。この治療のおかげで喘息死の割合は50年前の約1/10に減少しています。吸入ステロイドは気道のみに作用しますので、全身に対する副作用はほとんどありません。

これらの治療でも症状が安定しない場合は難治性喘息と言われます。近年難治性喘息の方に対する抗IgE抗体、抗IL-5抗体などの新しい薬(注射薬)も登場し、さらに気管支喘息の治療は進歩してきています。