保健の窓

PET/CT検診

鳥取市立病院放射線科 松木 勉

CTと重ねて正確に

基礎的なお話

PETとは陽電子(Positron)放出核種という放射性物質を用いた核医学検査です。陽電子放出核種は小型サイクロトロンなどの加速器を用いて合成されます。癌検診に用いられる18F-deoxyfluoroglucose(デオキシフルオログルコース)(FDG)はブドウ糖の一部を18Fという陽電子放出核種に置き換えたもので、生体内でのブドウ糖の動きを反映します。多くの悪性腫瘍においては細胞分裂・増殖が盛んでありエネルギー源としての糖代謝が亢進しておりFDGの集まりが強くなります。FDGを静脈内に注射して全身の糖代謝の状態を見ることで癌病巣の発見をします。

ただ、PETの画像のみでは解像度が悪く、部位の決定が難しいことが多いためCTの画像と重ねあわせることで位置情報をより正確に知ることができます。これまでPET装置とCT装置で別々に画像を撮ってコンピュータ上で重ねあわせをしていましたが、今では各々を合体させたPET/CT装置で、同じ体位でほぼ同時に撮影するために重ね合わせがより正確にできるようになりました。

症状がなければ有用

病気のお話

PET/CT癌検診はどのような癌に有用かというと、現在保険適用承認されている13種の悪性腫瘍(脳腫瘍、頭頚部癌、乳癌、肺癌、食道癌、大腸癌、転移性肝癌、膵癌、子宮癌、卵巣癌、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、原発不明癌)で臨床応用されています。内容としては癌の存在診断、腫瘍の良悪性診断、病期診断、治療効果判定、予後予測、再発・転移診断がなされています。

一般に検診で発見される癌は細小10mm前後といわれています。条件がよければさらに小さい癌が発見されることもありますが、大きくても発見できない場合もあります。PETで発見しにくい癌は、正常でもFDGが集まる部位(脳、胃、大腸、腎、尿路)に生じる癌が代表で、その他、細胞密度の低い肺胞上皮癌や胃の印環細胞癌、腫瘍細胞内にFDGを分解する酵素を持つ腎癌や肝細胞癌などです。基礎で述べたようにFDGはブドウ糖代謝をあらわしているので炎症性病変にも集まり、癌と区別がつけられない場合もあります。症状のある方はまずその症状に合わせて検査の計画を立てますが、症状のない方にとってはPET/CTは大変楽で有用性の高い検査といえます。