保健の窓

鳥取県のがん

鳥取大学医学部環境予防医学分野 尾﨑米厚

高い鳥取県のがん死亡率 40~50歳で顕著

鳥取県は、75歳未満の比較的若い年齢層のがん死亡率が高い県です。この傾向は男性で著しく、この約10年の間でも、全国でワースト5-6位を前後しています。全国平均と比較するとこの高い死亡率は特に40-50歳代にみとめられます。男女とも胃がん、肝臓がん、大腸がんの死亡率が全国平均より高い状況が続いています。

鳥取県では、「地域がん登録」という方法で、県内で発生するがんの動向を調べています(鳥取県がん登録ホームページ)。全国と比較して、鳥取県民の方がかかりやすいがんは男女とも胃がんです。最近は、男性では肺がんにも全国平均よりかかりやすいようです。全部位のがんをあわせても男性では全国平均よりがんにかかりやすいようです。

鳥取県のがん検診受診率など、がん検診に関する指標は決して悪くはなく、がんが見つかった後の医療も決して劣っているわけでもありません。むしろ、がんへの「なりやすさ」に問題があるようです。本人も、家族や周囲の人も、職場の人にも多大な影響を及ぼす比較的若く発症するがんをいかに防いでいくかが鳥取県の課題のようです。

サプリの摂取相談して 現代のがん予防

がんを発生しやすくする生活習慣が数多く調べられています。生活習慣は国や地域により異なるので、日本では、日本で調べられた結果に基づいたがん予防を行うべきです。がんを発生しやすくするのは、有名なのは喫煙ですが、その他にも塩分(胃がん)、加工肉(大腸がん)、熱い飲食物(食道がん等)、肥満(食道がん、大腸がん、乳がん(閉経後)等)、アルコール(食道がん等)、他人のタバコの煙(肺がん)等が明らかになっています。

がんを予防する生活習慣は、身体活動(大腸がん、乳がん)、野菜や果物(食道がん、胃がん、大腸がん等)、授乳(乳がん)等です。さらに、にんにく、食物繊維、牛乳、カルシウムのサプリメントは、大腸がん予防の可能性があり、食物に含まれるリコピン、セレン、セレニウムのサプリメントは前立腺がんを予防する可能性があるようです。様々なサプリメントが出回っていますが、医学的な証拠のあるものは少なく、ベータカロテン(ビタミンAになる物質)のサプリメントが特に喫煙者の肺がんを増やす例のように多く摂取しすぎるとかえって体に悪い場合もあるので、必ず主治医や家庭医に相談して、過度にならないような利用にしてください。