保健の窓

高齢者肺炎

鳥取県立中央病院内科 杉本勇二

重症化しやすい高齢者肺炎

我が国の人口動態統計(2011年)ではがん、心疾患に次いで肺炎による死亡率が3番目に多くなりました。肺炎は細菌などの病原体が肺に感染発症し、肺炎で亡くなる人の多くは65歳以上の高齢者です。咳、痰、胸痛などの呼吸器症状をともないますが、高齢者では呼吸器症状がなく、元気がない、食欲がないなどの症状が主体で肺炎と気づくのが遅れることがあります。

また、高齢者は肺や心臓、腎臓、脳の病気やがん、糖尿病など何らかの病気を有することも多いため、若い人に比較すると重症化しやすいと考えられます。まず肺炎に対抗するためには、もとの病気(基礎疾患)の予防が重要となり、食事や運動など日常生活への注意が必要です。特に喫煙は様々な病気に影響し、健康寿命を縮めることが知られています。慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病気は、ほとんど喫煙が原因で、高齢になって肺炎を合併しやすくなります。

病状が悪くなって後悔しないよう禁煙をしましょう。現在は禁煙治療薬もあり、保険を利用して治療も可能となっています。

肺炎球菌ワクチン接種を

肺炎で亡くなる人の多くは高齢者で、抗菌薬など適切な治療を必要とします。家庭や老人ホーム入所者などの肺炎で最も頻度が高く、重要な細菌が肺炎球菌です。抗菌薬も進歩していますが、細菌も耐性化しており、予防が大切になります。肺炎球菌ワクチンを接種すればすべての肺炎にかからないわけではありませんが、肺炎球菌肺炎に対して発症予防効果および死亡率低下が証明され、肺炎球菌ワクチンは優れたワクチンであることが認められました。インフルエンザは冬を中心に流行し、毎年インフルエンザワクチンが予防のため接種されており、現在では多くの高齢者が受けています。

しかしながら、肺炎球菌ワクチンの摂取率は、我が国ではまだまだ低い状況です。季節に関係なく投与可能で、1回接種すると5年程度は効果があり、また再接種も可能となりました。

今年も寒くなり、肺炎の患者さんが増加してきています。インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンを接種し、元気に過ごしていただくことを期待しています。