保健の窓

骨粗鬆症

鳥取市立病院整形外科 森下嗣威

骨粗鬆症~骨折で寿命が縮む

「年を取ると、転んでもすぐに骨が折れる」とはよく聞くことです。年とともに姿勢は前傾となり、足腰は弱って細くなり、骨粗鬆症健診を受けると若い人に比べて60%の骨しかないなどと言われたりします。ところが中にはいつまでも元気でスポーツを楽しんだり、中には競技会へ出場されたりして、いい意味で道から外れる人もおられます。どうしてでしょうか。

年とともに骨粗鬆症になるのはある意味で自然の経過ですが、その結果として太ももの付け根、せぼね、手首などに些細なことで骨折を起こしてしまいます。場合によっては入院して手術を受けたり、相当の障害が残って家族の方に介護してもらわなくてはいけなくなる場合もあります。実際に、骨折をすると寿命が縮むというデータもあるようです。年を取るのはしょうがないとしても、骨折をして介護を受けるのはなんとしても避けなくてはいけません。

骨粗鬆症対策には、運動、食事、薬の3本柱があります。中でも運動は最近皆さんの意識が高くなり、少しずつですが習慣にされている方が増えています。そして薬についても医学的にめざましく進歩しています。

次回は、骨のケアーから全身のケアーへとお話を進めます。

ロコモティブシンドローム予防~健康寿命を延ばす

前回は、骨粗鬆症対策の必要性を中心にお話ししました。

骨粗鬆症対策には、適切な運動、カルシウム摂取を考えた食事、近年進歩している薬の3本柱で行います。最近ではこれでデータ上も骨が強くなって来る方も出てきました。骨さえ強くなればそれでよいのか?といえば、実はその目的はデータの改善ではなく骨折予防であり、さらには介護を受けない生活(介護予防ともいいます)を送ることです。からだを動かす人間のしくみ(運動器といいます)の機能が低下して、介護が必要になってくる状態を、ロコモティブシンドロームといいます。近年提唱された疾患概念です。骨粗鬆症の予防をする究極の目的は、実はこのロコモティブシンドロームを予防すると言っても過言ではないでしょう。

現在75歳になっておられる方は、90歳以上まで生きるというデータがあり、非常に長寿になりました。しかし、最後の約5年程度は介護を受けないといけない状態であるとのデータもあり、自立して生活できる寿命(健康寿命といいます)はあまり伸びていません。

この健康寿命を延ばすことがすなわち、ロコモティブシンドロームの予防と言うことになります。