保健の窓

頭痛の原因と治療

鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設脳神経内科部門 中島健二

 

頭痛に悩む人は多い。しかし、医療機関を受診して適切な医療を受けることなく市販の鎮痛薬などの服用のみでがまんしている場合も多い。また、医療機関をせっかく受診しても、“たかが頭痛”といって通常の鎮痛薬を処方されるのみで、詳細な診察や治療を受けられなかったこともあった。最近になり、国際的に共通の分類・診断基準が用いられるようになり、また、新しい片頭痛治療薬も登場することにより頭痛診療は大きく進歩した。すでに、慢性頭痛の治療や診療のガイドラインも出されている。

頭痛は、一次性頭痛、二次性頭痛、神経痛・顔面痛の三つに大別される。一次性頭痛は機能性頭痛・慢性頭痛などと呼ばれていたもので、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛などがある。二次性頭痛は器質的疾患に起因する頭痛である。

頭痛の多くは生命の危険の少ないものであるが、時には見逃せば致命的な頭痛もある。頭痛診療の第一歩は、一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別から始まる。これまで経験したことのないような強い頭痛、最初あるいは最悪の頭痛、従来の頭痛とは異なる頭痛、突然発症した頭痛、急性・亜急性に生じてきた頭痛、進行性に悪化する頭痛、発熱・悪心・嘔吐を伴う頭痛、意識障害・認知機能障害・運動麻痺・感覚障害などの種々の神経症状を伴う頭痛、高齢者における初発頭痛などでは、二次性頭痛を考慮して速やかに原因精査を行なう必要がある。

二次性頭痛が疑われれば、十分な検索を行ってその原因となる疾患を診断する。二次性頭痛の治療は、原因疾患の治療が重要であることは言うまでもない。


 

通常の診療現場で遭遇する頭痛の多くが一次性頭痛である。一次性頭痛においては、国際頭痛学会による分類・診断基準により、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛を鑑別する。

日常診療においては、片頭痛か否かの鑑別が重要である。QOLを阻害して日常生活の支障になっているにもかかわらず、医療機関を受診する片頭痛患者は一部に限られている。近年、トリプタンという選択的な片頭痛急性期治療薬が使用されるようになり、片頭痛診療は大きく変貌した。

片頭痛は、片側性・拍動性のことが多いが、両側性・非拍動性の場合も少なくなく、また、肩凝りを伴っていることもあり、緊張型頭痛と間違えられることも少なくない。中等度~重度の頭痛で、日常的な動作により頭痛が増悪する。悪心・嘔吐や光過敏・音過敏を伴う。また、視覚症状などの前兆を伴うこともある。

一方、頭痛治療薬により、逆に頭痛が生じることもあり、薬物乱用頭痛と呼ばれる。原因薬剤があるところから、二次性頭痛の一つであるが、片頭痛が慢性化した慢性片頭痛との鑑別・関連性が注目されている。

現在、本邦では四種類のトリプタンが使用可能である。一つのトリプタンが無効であっても、他のトリプタンが有効のこともあり、それぞれの片頭痛患者でどのトリプタンが最も有効かを確認することも重要である。また、必要に応じて予防療法も行われる。しかし、本邦ではいまだ保険適用されていない片頭痛予防薬も多い。

頭痛は、一人で悩んでいることなく、医療機関を受診して速やかに診断・治療を受けることが重要である。