保健の窓

関節リウマチの診断と治療

鳥取市 たかすリウマチ・整形外科クリニック 院長 髙須宣行

関節リウマチの診断

 関節リウマチは自己免疫疾患で自分自身の正常な細胞や組織を自分自身の異常な免疫細胞が攻撃します。病変は関節のみならず肺や腎臓など多臓器に炎症が波及するため、関節リウマチは全身性疾患に分類されます。そのため、早期診断し寛解あるいは低疾患活動性を獲得することが重要となります。しかし、発症早期は関節腫脹や血液検査は陰性であることが多く診断に難渋することが多々あります。そのため、早期診断には、複数の指標を含む2010年のACR/EULARの分類基準に基づいて行います。内訳は、関節病変(関節腫脹、疼痛)、血清学的因子(リウマトイド因子、抗CCP抗体)、滑膜炎持続時間、炎症マーカー(CRP,血沈)であり、これら点数化して確定診断を行います。また、関節破壊はレントゲンで判定していましたが、近年、早期診断のためエコー、MRIが使用されています。とりわけ、エコーは外来で検査が可能で滑膜炎の有無、レントゲンで不明の骨破壊の有無がリアルタイムで描出でき早期診断に寄与しています。確定診断後は、治療目標(臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す)に沿い治療を開始します。

 

 

 

 

関節リウマチの治療

 関節リウマチの治療は、大別すると薬物療法と手術的療法の二つになります。薬物療法は、抗リウマチ薬、生物製剤、ステロイドであり、この3種類の薬剤をどの時点で使用するかが重要です。投薬前に胸部XP、血液検査(肝炎、感染症の有無)をチェックして異常がなければ治療を開始します。関節破壊は発病後2年以内に急激に進行するため、確定診断後は疾患活動性を強力に抑制する薬剤から開始することが現在の主流です。また、副作用のない薬はありませんので治療開始後は薬剤特有の副作用をご自身が理解し、異常を感じたら速やかに主治医に連絡して対処することが必要です。治療が奏功すると痛み・腫脹は消失し、小関節であれば関節破壊が修復されます。しかし、徐々に関節破壊が進行すると手術的療法が必要となります。以前は膝関節・股関節の人工関節が多くを占めていましたが、近年は手・足関節などの変形・痛みに対する手術が増加しています。これは、薬物療法の進歩で大きな関節の破壊が抑制された結果と考えられています。現時点では、関節リウマチを治癒に導く治療法はありませんが、長期にわたり寛解(治療中は治癒した状態)を達成することが可能となっています。