保健の窓

誰でもかかる「心のカゼ」?多様化するうつ病

鳥取県医師会常任理事 渡辺 憲

うつ病は現代の国民病

うつ病を患う人が増えております。わが国では、15人に一人が一生のうち一度はうつ病を罹患すると言われ、最近はもっと高い頻度を報告する研究者もおります。この背景には、現代社会のもつ様々な要因が指摘されます。

うつ病は「心のカゼ」?

うつ病は、よく「心のカゼ」と言われます。誰でもかかる病気として、気軽に相談していただくためには分かりやい表現ですが、一方、安静にして休んでいれば簡単に治るという印象を受けてしまいがちです。うつ病は、確かに軽症であれば、短い期間に完治する人も多いのですが、中等症~重症例では、病状の回復に1年を越す長い期間を要する場合もあります。また、うつ病の約15%の患者さんは、抗うつ薬の効果が得られず、病状が長引くと言われております。

うつ病が多様化している

カゼがいろいろなウィルスによっても同じような症状が現れるのと同様、うつ病の背景に多様な要因があっても、中心の症状は共通しています。一方、カゼからインフルエンザが分かれたのと同じように、従来、うつ病とみなされていた中で、別個の対応が必要となったのが、双極性うつ病、ディスチミア(不機嫌)型うつ病などです。次回、これらについて解説いたします。

若い世代中心に「現代型」増加

現代型うつ病

うつ病は、従来、几帳面で完璧を目指す傾向の強い性格の人がなりやすいと言われ、うつ病にかかると自責的となり、心身の衰弱も顕著となる人が多くみられました。一方、近年、若い世代を中心に、うつ病の症状を示すものの、職場などのストレスを感じる環境を離れると元気に過ごせたり、自分が悪いと悩むのではなく、周囲が悪いから自分が苦しむと他罰的な考えをもつ「現代型うつ病」「ディスチミア(不機嫌)型うつ病」が少しずつ増えてきています。

双極性うつ病

うつ病を繰り返す中で、病相の間に軽い躁状態がみられる人があります。このタイプを双極性Ⅱ型障害と呼びます。このタイプの人のうつ状態には、治療薬を含め、通常のうつ病の治療とは異なる治療計画が必要となります。

高齢者のうつ病

以上の若い人の「うつ」に対し、高齢者にもうつ病が増加しつつあります。高齢者においても、うつ病の症状は多様化しており、また、最近は、認知症に関連したうつ病が注目されています。

うつ病の治療と予防

うつ病の治療は薬物療法が基本ですが、認知行動療法などの心理療法も有効です。講演では、若年期、壮年期、老年期を通じたうつ病の治療・予防法について、ご紹介いたします。