保健の窓

認知症について~地域の理解と支え~

鳥取大学医学部付属病院 神経内科 和田健二

認知症の症状は多彩!

 現在、我が国の認知症高齢者数はおよそ500万人で、10年後には700万人に達すると推定されています。適切な時期に認知症と気づき、医療や地域ネットワークに繋がることが重要とさています。認知症の症状は①認知機能低下、②日常生活自立の障害、③行動・心理症状(BPSD)に分けられます。認知機能低下には「もの忘れ」と言われる記憶障害の他にも多彩な症状があります。言語能力が低下すると、「あれ、これ、それ」が増えてきて他人とのコミュニケーションがとりづらくなります。視空間機能が低下すると顔やありふれた物体の分かりにくくなるとともに、簡単な道具を扱う能力や衣服を体に合わせる能力が衰えてきます。判断力の低下がおこると、炊事、買い物、洗濯など家事などの日常生活に支障を来し段取りが悪くなります。お薬が自分で管理できない、預金通帳や年金の管理ができないなどの生活障害も早期から現れます。行動・心理症状(BPSD)には、大切なものを他人に盗まれたと信じ込む物盗られ妄想、やたらと怒りっぽくなる易怒性、幻視、徘徊、睡眠障害の他に、気分が沈み込む抑うつ気分、やる気が喪失するアパシーといわれる症状などがあります。

 

 

 

 

認知症の予防には生活習慣の見直しを!

 全世界で1年間に新たに発症する認知症者数は990万人と言われています。これは3秒に1人という頻度です。世界中で増加が予想されている認知症ですが、その発症率が減少傾向にあるという調査結果が欧米諸国から報告されるようになりました。認知症は社会経済にも強い影響を及ぼす疾患であるため認知症の予防法に注目が集まっています。 生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)は脳血管障害のみならずアルツハイマー型認知症の危険因子で、認知症予防のためには中年期から適切な管理が重要です。生活習慣を見直して頭の活性化も重要と考えられています。運動習慣が注目されていて、ウォーキングや健康体操などのような心肺機能を高める有酸素運動、自分の体重やチューブやダンベルを利用したレジスタンス運動(=筋力トレーニング)も注目されています。定期的な運動は一人よりは複数で行うとより効果的と言われています。計算やしりとりしながらウォーキングをするなどの認知機能を刺激する運動法(コグニサイズ)も開発されています。規則正しい睡眠や適切な食事の摂取などの生活習慣の見直しも重要です。