保健の窓

見つめてみよう かけがえのない 生命の営みを・・・!

ミオ・ファティリティクリニック 院長 見尾保幸

女性の身体と妊娠力(1)

 女性が新しい生命を宿し、育み、産み出すしくみは、イメージとしては分かっているようですが、実は、現代科学における地球上最大の神秘です。卵巣から排卵した卵子が卵管で精子と出会い、受精し、約1週間を経て子宮内に移動し、着床する。誰もが知っているこの妊娠のしくみは、まだ人類誰も目にしていません。しかも、直径0.1mmの卵子(重さは測定不能)が精子と受精し、266日間女性の体内で成長すると、身長50cm、体重3000grにまで発育できるという想像を絶する事態が、周囲の目には当たり前のように起ります。女性だけに与えられた妊孕能(にんようのう)(妊娠できる力;妊娠力)という素晴らしい能力はいくら研究が進んでも、そのほとんどが未知、未解決であり、生命誕生の謎そのものです。自然の営みとしては必然のしくみでしょうが、我々には、偶然の重なり合いによる奇跡としか思えません。何時の世も、生命は唯一無二、奇跡的選りすぐりの結実であり、だからこそ、限りなく尊く、愛おしいのだと思います。今、そんな生命が軽んじられる風潮にあり、これは本当に悲しいことです。私達は、今一度、女性に与えられた妊娠力を見つめ直す必要がありそうです。

 

 

 

女性の身体と妊娠力(2)

 地球上の全ての生物がそうであるように、ヒトの身体も日々刻々と急激な勢いで変化しており、新しい生命を産み出す「妊孕能(にんようのう)」(妊娠できる力;妊娠力)を持つ女性の身体とて例外ではなく、女性の身体は加齢とともに確実に妊娠力が低下します。今回は、この不可避な加齢による女性の身体の変化と妊娠力について解説します。 女性の卵巣には新しい生命の源である「卵子」が存在しますが、卵巣の卵子数は急激に変化し、妊娠6ヶ月の胎児期に最も多くなり(約600万個)、その後は減少の一途で、出生時には約100万個、初潮を迎える頃に約30万個、35歳で2万5千個程度になります。また、卵子の質も、時間とともに劣化し、さらに、加齢に伴う子宮筋腫、子宮内膜症の発生など、加齢に伴う身体全体の変化が総合的に妊娠力低下をもたらします。したがって、状況が許されれば、妊娠力の低下する前に赤ちゃんに出会えるよう早期の対応が望ましいと思います。しかし、加齢により状況が厳しい女性であっても、的確な生殖医療の力を利用すれば、ほとんどの女性で赤ちゃんの夢は叶います。決して悲観的にならず、できるだけ早期に生殖医療専門医にご相談頂きたいと思います。