保健の窓

腰痛の予防と自己管理~腰痛の予防とつきあいかた(日常できる自己管理)~

鳥取県医師会理事 明穂政裕

 

多くの方が経験する腰の痛みですが、その原因は多岐に亘っており治療も安静から手術を要するものまでさまざまです。内臓の病気や感染症、さらには悪性腫瘍によるものもあり専門医に紹介されることも時にはあるでしょう。しかし生活習慣病のように日頃より予防のできるものもあります。全てを継続していくのは困難ですが幾つかでも良いですから続けて下さい。

第一は腰に負担の少ない姿勢です。人間の姿勢は横から見ると緩いS字状のカーブを描いています。この姿勢が一番無理のかかりにくい基本です。中腰は腰椎に立位の約2倍の負荷がかかりますから避けたいものです。立ち続け、仰向けで膝を伸ばした格好は、できるだけ少なくするか途中で脚の位置を変えましょう。低い台を用意し片足を交互に足をのせると腰の反りが少なくなり背筋の緊張も減り台所仕事や販売などの立ち仕事には有用です。

肥満や妊娠時さらにはハイヒールを履いた時には腰椎の前彎(腰の反り)が強くなるため悪化する原因となります。中腰にならないためには作業する台の高さや立つ位置を調節することです。物を持ち上げる場合には、足を前後または左右に開き、できるだけ体に近づけて、腰をあまり曲げないで、膝を曲げ、腰を下ろして、さらには掛け声を出して持ち上げましょう。軽いものでも決して体をひねって持ち上げないでください。上の物を取ろうとするときは爪先立ちの背伸びはしないで腰が少し曲がるぐらいの足台にのりましょう。とにかく物を取ろうとするときは体の正面で膝を曲げた姿勢で、腰はあまりひねったり、曲げたりしないよう習慣づけましょう。


 

椅子座りでよい姿勢は基本的に膝と股の高さを同じにすることです。椅子の高さを調節し、それができねば膝を組んだり、足台を置きましょう。また背もたれ、肘かけ、机などを利用して負荷を分散させましょう。

畳の上では、正座が一番腰への負担が少ないです。立っている時の腰の形に近いからです。畳座りの胡坐は、最も腰の負担が大きいです。お尻の下に厚い小枕を入れてください。

同じ理由から両膝を伸ばして座るのはいけません。椅子から立ち上がる時は腰をまず前方にずらして、足を前後に開いて手をついて支えながら立ち上がると安全です。事務職やパソコンを使うなど座位仕事の多い人は20~30分に1度は立ち上がるようにしてください。このためには資料集めや確認、ファクスやコピー作業などで意識的に立ち上がるのがよいですし、同時に背伸びや体の屈伸などの体操も行えば最高です。

寝ていても腰には体重の1/2~1/4程度の圧力がかかっています。仰向けで寝る時は膝の下に枕か座布団を折って入れて膝を曲げていてください。横になって寝れば同じ姿勢に近くなるためよいでしょう。腹ばいは腰が反るためよくないのですが、どうしても必要があればお腹の下に枕を入れてください。仰向けから横向きになる場合、まず両膝を立てて肩と骨盤を同時に動かしましょう。決してひねらないでください。同じ姿勢を長く保たないことと同じ動作を何度も繰り返さないことも原則としてください。

お腹の出ている人は腹筋訓練の強化訓練をし,平背(背中が横から見て全く平らになっている)の人は背筋訓練をしましょう。2本脚で行動するのは腰に負担の掛かるものです。

何とか工夫して、腰痛のないか、少ない生活をおくりましょう。