保健の窓

腎臓病を進行させない治療と生活習慣

さとに田園クリニック 院長 太田匡彦

慢性腎臓病について

 慢性腎臓病(Chronic Kideney Disease:CKD)は、慢性的に腎臓の機能が低下する様々な腎臓病の総称です。日本成人の8人に1人がCKDであるといわれます。初期は自覚症状がないため放置されやすく、いったん低下した腎機能は回復しません。腎機能の低下が進むと腎不全に陥り、最後は透析療法が必要です。日本の透析導入患者数は、年3万人にのぼり、2011年末時点で透析患者は30万人です。さらに、CKD患者は腎機能の低下につれて心血管病(心筋梗塞や脳卒中など)を合併しやすいことがわかりました。透析まで至らないCKD患者でも心血管病を起こす危険性は高いのです。以上からCKDの早期発見早期治療の重要性は、末期腎不全(透析)への進行を抑制することと心血管病の発症を抑制することです。原因として生活習慣病による腎臓病が増加しています。糖尿病による腎臓病(糖尿病性腎症)は、最近の透析導入患者数の第1位で過半数をしめ、高血圧からの腎臓病(腎硬化症)が第3位です。そのほか、脂質異常症、高尿酸血症、肥満、メタボもCKDの危険因子です。以上からCKDの予防には生活習慣病の予防がとても重要です。

 

 

 

慢性腎臓病について

  慢性腎臓病(CKD)の診断は、蛋白尿が持続して陽性である場合や推算糸球体濾過量(eGFR)で表される腎臓の機能が基準よりも低下している場合です。蛋白尿は検尿で簡単にわかり、早期発見に重要な検査です。血液検査でクレアチニン値がわかると年齢、性別からeGFRが計算できます。この数値でCKDの進行をステージG1~G5に分けて診断します。ステージが進むほど、蛋白尿が多いほど進行は早まります。G1、G2は、原因疾患治療、生活習慣是正、血圧管理でCKDの治癒が可能なので、早期発見早期治療が重要です。G3まで進行すると腎不全に陥りやすく、心血管病の合併が多くなるため腎専門医のへ受診が勧められます。G4、G5は、尿毒症状が顕著となり、透析療法の準備が必要です。治療の中心は、生活習慣是正、食事療法、薬物療法です。生活習慣是正は、禁煙、肥満防止、運動などで、食事療法は、減塩、たんぱく質制限、十分なエネルギー摂取などです。厳重な血圧管理が治療に必須で、腎臓を守る降圧剤が薬物療法で重要になり、130/80mmHg未満が目標です。CKD治療は、患者の状態や病期に応じてこれらの治療法を組み合わせて行われます。