保健の窓

脳卒中、心筋梗塞の危険性が高まる 高血圧からCKDへ

鳥取大学腎臓内科 宗村千潮

脳卒中、心筋梗塞の危険性が高まる 高血圧からCKDへ

4月に続いてCKD(慢性腎臓病)についての話題です。

前回は透析導入の原因で現在最も多い糖尿病についてお話ししました。透析の原因の2番目は慢性糸球体腎炎。ただ最近は減少傾向です。今回の話は3番目の高血圧についてです。2009年に新たに透析を開始した方37543名のうち、3936名10.7%の方の原因が高血圧です。透析導入の原因としては糖尿病や腎炎ほど多くないですが、蛋白尿や軽度の腎機能低下の原因としてはかなりを占めていると思われます。しかも糖尿病と同様透析原因としてはどんどん増加しており厄介です。

高血圧(140/90mmHg以上)患者は3970万人とわが国は高血圧だらけです。高血圧の方でCKDになるのは一部ですが、これだけ高血圧が多いとCKDの原因としてはかなり多くなります。高血圧により脳卒中や心筋梗塞等が起こることがありますが、CKDを合併するとその危険性がさらに高くなります。高血圧の方は降圧剤を内服するだけでなくて、最低年1回はかかりつけ医で血液検査、尿検査を受けて腎機能の低下がないか、尿蛋白が出ていないか調べてもらってください。

生活習慣改善と健診を メタボからCKDへ

最後は肥満、メタボリックシンドロームとCKDです。肥満やメタボが原因で透析になったという話を聞くことはありませんが、CKDの原因にはしばしばなります。腎臓には血液の中の老廃物や水分をこし出す働きがありますが、それらは片方の腎臓の中に100万個ほどある糸球体というところで行われています。肥満の方はお腹が大きいだけでなくて、糸球体も大きくなっています。肥満(腹囲:男性≧85cm、女性≧90cm)があって、脂質異常、高血圧、高血糖のうち2項目以上認めるとメタボリックシンドロームと診断されますが、項目数が多いほどCKDの頻度が高いことがわかっています。以前お話したようにCKDは心血管病の合併が多いことが問題となっていますが、メタボがあるとさらに心血管病の合併が増える可能性があり注意が必要です。

糖尿病、高血圧、メタボと生活習慣病を基盤としたCKDがどんどん増えていることをお話してきました。いずれにも共通していることはCKDの予防としては生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の改善)、そして早期発見のために健診をきちんと受けて、CKDに該当しないかをチェックしてもらうことが大切です。