保健の窓

脳卒中とその予防

国立療養所西鳥取病院名誉院長 北川達也

 

わが国の死因として脳血管障害(脳卒中)はがん、心疾患に次いで第3番目です。血圧のコントロールや食習慣の改善などにより脳卒中で直接死ぬことは少なくなってきていますが、高齢者の増加と共に脳卒中そのものの数は増えています。即ち、高齢化、軽症化しています。脳卒中はその障害を受けた脳の部位によって片麻痺などの身体機能の障害や言葉、意欲、感情などの精神機能に障害をきたします。脳卒中は一旦発病しますと長期に亙る治療やリハビリ、さらには介護の必要な人も多く、社会的にも、医療経済的にも重要な国民病という状況です。

脳卒中は大きく分けて、脳の血管が破れる脳出血と脳の血管が詰まる脳梗塞に分けることができます。さらに脳出血は脳の血管が破れて脳実質の中に出血する脳出血と脳の表面の動脈瘤が破裂するクモ膜下出血があります。そして脳梗塞は脳に行っている動脈の硬化で血管の内腔が狭くなって血液の流れが悪くなり、完全に閉塞してしまう脳血栓症と心臓などにできた血液の塊が血管の中を流れていって脳の血管を塞ぐ脳塞栓症があります。

脳卒中は発病したらできるだけ早く治療を始めることが大切ですので、それが疑われるときには直ちに病院に搬送し、出血か梗塞かの鑑別を行い、その病気の原因に応じて素早く治療を始めることが重要です。そしてリハビリも出来るだけ早期から行うことです。そして再発予防、寝たきり予防、ADL(日常生活動作)の維持、良好な生活の維持、に気をつけなければなりません。

急速に進む高齢化社会の中で、医療や介護は大きな社会問題になっています。寝たきりの4割、痴呆の4割は脳血管障害が原因になっています。ですからその予防が大切です。人は血管と共に老いると言われますが、同じ年を取るにしても、生活態度、生活習慣のあり様によっては、普通よりも早く年をとってしまう場合もありますし、普通よりも若い状態に保つことも可能です。脳卒中の場合は加齢、高血圧、糖尿病が最も大きな危険因子です。その他、酒、タバコ、肥満、不整脈、ストレス、運動不足なども影響します。これら危険因子ばかりでなく、意欲的に生きる、活動的に生きる、楽しく生きる、社会や人のためになる生き方をする、などプラス思考も大切です。

1.性と年齢

女性ホルモンが動脈硬化を抑えるためと男性の方が酒やタバコを飲み、生活が不規則で、ストレスにも弱いなどで、脳卒中全体をみますと男性の方に頻度は多いと言えます。しかし更年期以降は女性も男性に近づきます。

2.高血圧

高血圧は脳出血や脳梗塞の最大の原因ですので、高血圧の予防が大切です。減塩やバランスのとれた食生活と共に、ストレスや心身の過労に注意し、心の平穏に努めることです。持続的に血圧の上昇がみられるようになったら、薬物によるコントロールも必要です。全国で高血圧の人は800万人と推定されています。

3.糖尿病

体質も関係していますが、食べ過ぎ飲み過ぎと運動不足が大きく関わっています。飽食の時代、車社会が糖尿病を増加させています。