保健の窓

脳卒中 タイプによって異なる治療

鳥取県立中央病院脳神経外科 田渕貞治

脳卒中の予防、早期発見(上)

脳卒中とは、あたかも風にあた(中)るがごとく、卒然として発症することから、その名があるように、急性に生じる脳血管障害(脳の血管が原因で生じる病気)のことを指します。日本人の死亡原因として、脳卒中は癌、心疾患に次ぐ第3位であり、寝たきりの原因第1位です。脳卒中には多くの危険因子や生活習慣が深く関与しており、予防が可能な病気です。また最近の画像診断などの進歩により、発症する前の早期発見も可能となってきています。万が一不幸にして発症した場合でも、早期に脳卒中専門病院で診断を受け、適切な治療を開始することで、被害(後遺症)を最小限にくいとめることができます。

その中で、まずは予防が大切ですが、次に早期発見、早期診断が重要です。複数の危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙など)、家族歴(2親等以内に脳卒中の人がいる場合)などを有する場合には、脳ドックを受診することをお勧めします。ただし、脳ドック受診が最も効果的な年齢は50歳台から60歳台の人です(75歳を過ぎますと、治療や手術適応などがかなり限られます)。また、危険な症状、兆候が出現した場合には、一刻も早く病院に連絡、受診して下さい。

脳卒中の予防、早期発見(下)

脳卒中の治療には、内科的治療と外科的治療があり、病気の時期により、急性期治療と慢性期治療に分けられます。脳卒中には大きく分けて血管が詰まるタイプ(脳梗塞)と血管が破れるタイプ(脳出血、くも膜下出血)があります。それにより治療は大きく異なります。

脳卒中の中で最多は脳梗塞(約6割)です。脳梗塞の大部分では、お薬(点滴)を用いた内科的治療で、最近では超急性期血栓溶解療法も可能となりました。脳血管の高度狭窄や閉塞がある場合、慢性期に外科的治療が必要となることもあります。次は脳出血(約1/4)ですが、重症度に応じて内科的治療、外科的治療を選択します。

くも膜下出血は全体の約1割と決して多くはありませんが、最近では人口の高齢化に伴い増加傾向にあります。そのほとんどの原因は脳動脈瘤破裂によるもので、ひとたび発症すると約1/3から半分の人が亡くなる病気で外科的治療が必要です。これには開頭して行うクリッピング手術と、血管内手術というカテーテル治療とがあり、症例に応じてより適切な方法を選択します。また、これらは発症する前に発見された未破裂脳動脈瘤に対しても行われることがあり、予防的治療となります。