保健の窓

脳卒中

鳥取大学医学部附属病院神経内科 和田健二

早期受信・治療が重要

「卒中」とは「突然おこる」という意味で,脳卒中とは運動麻痺などの脳障害が突然に起こることを意味します.脳卒中は脳梗塞,脳出血,クモ膜下出血の3つに分けられます.脳梗塞は,脳の血管が詰まり脳に酸素や栄養が送られなくなったためにダメージを受ける病態で,脳の血管が破れて脳の中に出血するのが脳出血で,脳の表面の血管が破れて出血するのがクモ膜下出血です.脳血管障害は第3位の死因のあり,寝たきりとなる最大の原因でもあります.

脳卒中の症状には「手足や顔半分の麻痺・しびれ」,「ろれつが回らない,言葉が出ない」,「フラフラして歩けない」,「物が二つに見える」,「経験したことのない激しい頭痛」などがあります.脳卒中の治療は進歩しています.特に脳梗塞の場合,超急性期において t-PA静注により詰まった血栓(けっせん)を溶かす治療や血栓を血管から引き抜くような血管内治療が行われるようになりました.すべての方がこれらの治療適応となるわけではありませんが,一分でも早く受診することで治療の選択肢は拡がります.より早期段階での治療開始は脳ダメージを最小限にしますので,早期の受診が鍵がとなります.

前触れ、一過性脳虚血発作

脳梗塞はいきなり発症する場合もありますが,しばしば前触れ発作を経験することがあります.一過性脳虚血発作と言われ,英語の頭文字をとってTIAと呼んでいます.TIAは脳血流が一時的に遮断されたために起こる脳障害で,短時間で症状が改善するものです.片方の手足が動かなくなる,片目が見えにくくなるなどの症状が,通常10分位で回復してしまいますので,そのまま放置されてしまう方がおられます.そのうち約15%の方は3ヵ月以内に脳梗塞を発症し,特に1週間以内はその危険性が最も高いと言われています.一過性でも危険な発作ですので見過ごさず,すみやかに専門医を受診してください.適切な治療により脳梗塞の予防がかなりできると言われています.

脳卒中の予防には,高血圧,糖尿病,脂質異常症などの治療や禁煙などの生活習慣改善が大切です.抗血小板薬や抗凝固薬が予防薬として使用されます.また,超音波検査,MRIやCTにより脳血管の動脈硬化の状態を評価し,血管狭窄が非常に強い場合には外科的に手術をすることもあります.脳卒中の予防法も進歩しましたが,脳卒中にならないためには普段からの心がけが重要です.