保健の窓

脳出血と脳梗塞

鳥取生協病院脳神経外科 齋藤 基

 

寒さも厳しくなり、脳卒中が心配な季節となりました。脳の血管障害により引き起こされる脳卒中の中でも今回は脳出血と脳梗塞についてお話ししたいと思います。

1.脳出血

脳卒中の一つのタイプで脳実質内に出血がおこるものを言います。突然の頭痛、脱力(麻痺)、しびれ、言語障害などがおこります。出血が増大すると頭痛は次第にひどくなり、嘔吐、意識障害がおこり、出血が止まらない場合は死に至る恐ろしい病気です。

原因は殆どの場合、高血圧によるもので、脳の穿通枝動脈(太さは50~250μm程度の細い動脈)の血管壁が変性して微少動脈瘤(クモ膜下出血の原因である脳動脈瘤とは異なります。)を形成し、これが破綻することが原因と言われています。脳の深部での出血が多く、場所によりさまざまな症状を呈しますが、運動障害などの後遺症を残すことが少なくありません。高血圧以外には高脂血症、たばこなどが危険因子とされています。

出血の場所や程度はCTスキャンによって容易に検査することができます。場合によっては脳血管撮影を行い、脳動脈瘤や脳動静脈奇形など特別な出血源の有無を調べます。

出血が少なくてすんだ場合は手術をせずにすむことがあります。この場合は脳圧を下げるため点滴治療を行いますが、血腫が自然に吸収されるのを待ちます。血腫が大きい場合で生命にかかわる場合は開頭術を行い血腫を除去します。生命にかかわらなくても肺炎などの合併症の頻度を少なくし、早期離床、リハビリテーションを進める目的で侵襲の少ない定位的血腫除去術を行う場合が有ります。いずれの場合もその後のリハビリテーションが大切です。(鳥取生協病院脳神経外科)

2.脳梗塞

脳血管の閉塞によって脳細胞が障害を受け壊死することを言います。脳の基本的構造として、ある部分の脳組織はそこを受け持つ1本の動脈から栄養を受けています。そのためその血管の血流が途絶えると支配領域は死滅してしまうわけです。頸部の内頚動脈は動脈硬化によって狭窄や閉塞をきたし易い部分ですが、ここが詰まったりすると脳の大きな部分が梗塞に陥ります。またより細い血管ですと領域の小さな脳梗塞となるわけです。このように動脈の内腔が動脈硬化によって次第に狭くなり、最後には閉塞する場合、つまり血管に問題がある場合、脳血栓とも呼ばれます。梗塞の場所により言語障害や手足の麻痺がおこります。また一時的に手足の力が抜けたり、言葉が話せなくなりまたすぐ回復する(24時間以内)発作を一過性脳虚血発作(TIA)と言いますが、大きな動脈に問題のある場合が多く、警告発作ですので精密検査が必要です。症状に現れない小梗塞は無症候性梗塞と言われます。これらの脳血栓の原因は脳動脈のアテロ-ム硬化(血管壁にコレステロ-ルなどが蓄積し、内腔が狭くなる変化)が主で、高血圧が関与しています。

次に脳の血管には問題はなくても心房細動などの不整脈によって心臓に血栓ができる場合、血流にのってその血栓が運ばれ脳動脈につまり、脳梗塞を引き起こすことがあります。これは脳塞栓と呼ばれます。すぐに溶けて血流が再開してくれれば回復しますが、6時間を超すと回復不能になり、さらにその後、遅れて血流が再開しますと脳浮腫が起こったり、出血を起こす場合もありとても危険な疾患です。予防には血栓ができないようにする予防薬を服用します。

脳卒中を予防するために、寒い季節には高血圧の方は特に日頃の生活にご注意下さい。