保健の窓

脈の乱れ(不整脈)に気付いたらどうすればよいか

鳥取県立厚生病院総合健診センター部長兼内科医長 竹田晴彦

 

心臓は全身に血液を送るポンプとしてその時の身体の状況に応じて時に速く、また遅く1日に約10万回拍動しています。

この筋肉の塊であるポンプを秩序を持ってしかも効率的に動かすには電気の力が必要です。心臓には電気を起す発電所と電気を伝える通路が備わっています。発電所は洞房結節と呼ばれ、上大静脈と右心房が接合する付近にあります。そこから起った電気は心房に広がり、その刺激で心房筋が収縮し、貯蔵していた血液を心室へ送り込みます。次いで心室に伝わった電気は心室筋を収縮させて全身に血液を送り出しています。

不整脈は大きく三つに分類してみると分りやすいと思います。

(1)脈が速くなるもの

運動したり緊張した場合は脈は速くなりますが、これは生理的変化と言って異常ではありません。脈を速くさせる病気が背後にあったり、ほんのわずかなきっかけで突然脈が速くなってしまう。これらを頻脈性不整脈と呼びます。

(2)脈が遅くなるもの

心拍数が50/分以下になった場合です。一般的に脈拍数が40/分以下になると生体の需要に応じる血液量が不足して最後には心不全に陥ります。脈拍がさらに遅くなったり、電気の通路が遮断されることが起って3秒以上も血流が止まった状態が起れば、脳の血流不足のためにめまいや、さらに失神を生じます。

(3)脈のリズムが不規則になるもの

心臓の発電所(洞房結節)には何ら異常がないのに、他の部位で早い時期に発電してしまったことが原因です。

動悸(ドキドキする)、胸がつまった感じや圧迫された感じ、めまいに気付いたら先ず脈をとって下さい。
① 脈が触れない(血圧が低下した状態、さらにショック状態)。
② 数えられない(脈拍130/分以上)。
③ 遅い(脈拍50/分以下)。
④ 比較的規則的か、まったく不規則な脈か。
⑤ 突然に起ったか、また突然に止まったか。
⑥ どうしたら止まったか。
⑦ 何か誘因があったか(体位、運動、ストレス、身体の不調、薬の使用など)。
これら①~⑦を記録し、主治医に話して下さい。医師に極めて重要な情報を与え、それのみで不整脈の診断に至ることも可能です。

医師は患者さんからの訴えを参考に診察をした上で、不整脈を起す心臓病やそれ以外の疾患が潜んでいないか調べます。その時に利用するのは血液検査、胸部X線写真、心電図です。ここで不整脈の診断がつけばよいのですが、みつからぬ時には24時間心電図を記録できるホルター心電図で日常生活と患者さんの訴えを対比させて詳しく調べます。

運動、労働によって起るものであれば運動負荷心電図も有用です。心臓の病気を精密に診断でき、しかも苦痛を伴なわない検査方法として超音波による診断装置は欠かすことはできません。

不整脈治療には内服薬が基本ですが、異常に遅い脈や、脈の途絶のために日常生活が困難であったり、生命の危険がある場合には外部より電気を送って治療するペースメーカー治療が必要です。

最後に高齢化社会を迎えて特に注意を喚起しておきたい心房細動について説明したいと考えております。