保健の窓

肩こりと手足のしびれ

鳥取赤十字病院整形外科 高橋敏明

休養や運動で予防を

厚生労働省による国民生活調査によると肩こりは女性の訴える自覚症状の第1位で男性では腰痛についで第2位となっています。肩こりとは後頭部から肩、および肩甲部にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状です。これは人類が二足歩行となり、首で重い頭をささえ、両腕をつりさげて手が使えるようになったための代償といえます。肩こりは体を大きく使う労働よりもパソコンなど脇を固めて指先を長時間使うような作業に多く、不良姿勢、運動不足、筋力低下、血液循環の不良、ストレスなどが関係しています。20歳代後半になると頚椎のクッションの役割をはたす椎間板の老化など背骨の加齢が原因で生じるものも増えてきます。

病院では内服薬や外用薬の処方、牽引や温熱療法など理学療法も行いますが、基本的には休養、生活習慣の改善、体操やスポーツの習慣化など予防に勝るものはないと思います。椎間板の老化やそれに続いて背骨の辺縁にトゲ(骨棘)が生じてくると、神経が圧迫されて手足のしびれや脱力が生じてくることがあります。このような症状がでたら、早めに整形外科への受診をお勧めします。次回は頚椎の加齢による病気についてお話しします。

首の痛みや手足のしびれ 頚椎の加齢による病気

首の痛みや肩こりに加えて、腕にもしびれや痛みがある場合は、頚椎に原因がある可能性が高いといえます。頚椎の病気にはさまざまなものがありますが、多くは頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症など椎間板や背骨の老化に伴った加齢変化によって起こってきます。頚椎から出る脊髄から枝分かれした神経根が圧迫されると、通常片側の首から肩、腕へと強い痛みやしびれが走り、首をそらせると症状がひどくなります(神経根症)。多くは安静、投薬、ブロック療法、理学療法などの保存療法で軽快します。脊髄そのものが圧迫されると症状は多岐にわたり、しびれが片手だけでなく両手にまで起こったり、箸がもちにくい、文字が書きづらい、ボタンがかけにくいなど運動障害が現れます。

さらに症状は手ばかりではなく、両脚のしびれや脚がもつれて歩きにくい、圧迫がひどいときには排尿や排便の異常もでてきます(脊髄症)。脊髄症の場合は一般に保存療法では治りにくく、加齢とともに進行することが多いようです。症状が長引くと回復が難しくなることもありますので、ある程度症状がでそろえば手術を考える必要があります。