保健の窓

肝がん:早く見つけ、早く治療する

福山市民病院 がん診療統括部長 坂口孝作

 

B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが感染して慢性肝炎や肝硬変になっている人、あるいはお酒の飲みすぎで肝硬変になっている人に肝がんはできます。慢性肝炎、肝硬変の人は定期的に腹部超音波検査、CTあるいはMRI検査を受け、小さい肝がんのうちに見つけることが重要です。

肝がんの治療法は、肝がんの大きさ、個数、そして慢性肝炎、肝硬変がどの程度すすんでいるかによって異なります。原則的に、肝臓がいい状態で肝がんが切除可能な範囲であれば外科で手術になります。肝硬変がすすんでいて手術ができない状態で、肝がんが小さくて個数が少なければ内科でラジオ波焼灼療法(腹部超音波検査で肝がんをみて、肝がんに針をさして電磁波で焼き切る方法)で治療します。大きい肝がん、多数の肝がんでは、カテーテルを動脈から肝臓に挿入して抗がん剤を肝がんに注入する方法(肝動脈塞栓化学療法)で治療します。進行した肝がんは新しい経口抗がん剤(ソラフェニブ)で治療することもあります。

肝がんは治療後にも再発します。肝がんを治療した後でも、定期的に検査を行い早期に肝がんを発見できるようにしなくてはなりません。また、慢性肝炎、肝硬変が進行すれば肝がんも再発しやすくなります。アルコールをひかえ、無理をしないことなど、肝臓をいたわるように大切にしてください。

 

表1.主な肝がんの治療法
外科的切除(手術)肝機能が良好で、肝がんが切除可能であるとき
ラジオ波焼灼療法(RFA)肝硬変でも可能
大きさが小さくて、個数が少ないとき
肝動脈塞栓化学療法(TACE)大きさ、個数は問わない
黄疸、腹水があるような肝硬変には困難
放射線療法肝がんの血管への浸潤(門脈腫瘍塞栓)、骨転移に対する治療
抗がん剤持続注入療法
(肝動脈、全身投与)
門脈腫瘍塞栓によって肝動脈塞栓化学療法ができないとき
他臓器に転移があるとき
経口抗がん剤肝がんの進行により上記の治療法ができなくて、肝機能のよい状態