保健の窓

糖尿病と上手につきあうために

鳥取県立中央病院長 武田 倬

 

糖尿病は生活習慣病の中で最も代表的なものです。その原因から治療までを2回に分けて考えてみます。

1.糖尿病はどうしてこんなに注目されるようになったのでしょうか?

① 糖尿病の人の増え方が非常に多い

② 長い間に失明や腎臓の障害などの重い合併症を起こす人が増加している

殊に合併症は患者さんの苦痛が大きく、生活の質を落とします。しかも早く発見して、きちんと治療をしていれば防ぐことが可能なので、まず病気を正しく知ってもらうことが大切です。

2.糖尿病はどうして見つけるのですか?

以前はのどの渇きや体重減少などの特徴的な症状が出て初めて発見される場合が多かったのですが、最近では人間ドックや健診で症状が出る前の早い時期に発見される方が最も多くなっています。このような例では軽症糖尿病が多いのですが、中には眼底出血などの進んだ合併症を起こしている人も見うけられます。糖尿病は症状がほとんどなくても、長い間に合併症が起こり、進行することがあるので注意が必要です。

① 健診や人間ドックで糖尿病のチェックを定期的に受ける。

② 糖尿病や疑いがあると言われたら必ず医療機関を受診し、治療を中断しない。

3.どの様な人が糖尿病になりやすいですか?

① 血縁者に糖尿病の人がいる

② 肥満している人

③ 巨大児(4㎏以上)の出産、妊娠中に尿糖が出たことや血糖が高かったことのある人

④ 検診で高血糖を指摘されたことのある人

このような人は糖尿病になりやすいので定期的に検査を受けましょう。

糖尿病の特徴は①血糖値が高い。この状態が長く続くと小さい血管(眼や腎臓など)が障害される。②糖尿病は肥満、高脂血症、高血圧を伴いやすい。これらのコントロールが悪いまま長く続くと大きい血管(心臓や脳など)の動脈硬化症を起こしやすい。従って糖尿病の治療はこれらすべてをコントロールすることです。中でも治療の中心である血糖コントロールについてみましょう。

1.食事療法

決して特別な食事ではなく、健康的に食べることがその基本です。

① 量が多すぎず少なすぎず
体重と体をどれだけ動かすか(エネルギー消費量)によって適量が決まります。

② すき嫌いなくバランスよく食べる
特に脂肪や砂糖のとりすぎに注意が必要です。
その他高血圧の人では塩分、高脂血症の人ではコレステロールやアルコール、菓子などの制限も必要になります。

2.運動療法

① 運動は糖の利用やインスリンの効きを良くして血糖が下がる

② 筋力を保ち、心臓や肺の機能を良くする
運動制限を必要とする病気がないか、どの位の運動が適当か主治医に診断と指示を受けましょう。

3.薬物療法

食事と運動で血糖値が改善しないときには薬物治療が開始になります。

のみ薬(経口血糖降下薬)とインスリン(注射)があります。

医師の指示を守っていけば必ず血糖はコントロールできます。その他に薬物治療においては治療を中断しないことと低血糖(薬が効きすぎた状態)に注意して下さい。

治療法は人によって異なります。指示を守れば安全で、良いコントロールが保たれれば重症合併症を起こしません。