保健の窓

糖尿病

鳥取県立中央病院糖尿病・内分泌・代謝内科 村尾和良

糖尿病は万病のもと

 先日、糖尿病およびその予備群を合わせると27.1%と推計されると厚生労働省の「2011年国民健康・栄養調査報告」で明らかになりました。実に国民の4分の1以上に上り、国民病というべき糖尿病についてはテレビ・新聞・雑誌・インターネットなど様々なメディアで様々な情報が発信されています。


 糖尿病で一番問題になるのは、長期間放置することにより発症する様々な合併症です。代表的なのは三大合併症と言われる網膜症(眼)、腎症(腎臓)、神経障害(末梢神経)ですが、動脈硬化が原因となる狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害、末梢動脈性疾患や壊疽などの糖尿病性足病変に加え、最近では歯周病、認知症や癌も合併症として考えられるようになってきています。


 合併症を予防するには血糖値を良好な状態に保つ必要があります。基本となるのは「食事」と「運動」になりますが、それでもうまくいかない場合は「薬」を使うことになります。これらについては実に様々な情報が世間に出回っています。やり方を間違えるとかえって悪影響を及ぼすことがありますので、実際にやってみる前に主治医に相談することをおすすめします。

 

 

 

正しく理解し療養を

  糖尿病の合併症予防には良好な血糖コントロールが重要ですが、治療の基本は食事と運動になります。食事に関して最近の話題は糖質制限食になると思います。これは、血糖値に反映されやすい糖質の量を減らすことで血糖値が上がらないようにしようというものです。血糖値は確実に下がりますが、極端な制限によりタンパク質や脂質の摂取量が増えることで腎臓や肝臓等に負担がかかり、かえって状態を悪化させる場合がありますので注意が必要です。日本糖尿病学会からも「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」が発表され注意喚起がなされています。


 運動に関しても従来ウォーキングなどの有酸素運動をまとまった時間行うことが薦められてきましたが、短時間の運動でも総時間が多ければ効果があるという報告が出ています。普段の生活の中で少しでも動くという心がけが重要のようです。


 様々な情報を正しく理解し適切な療養生活を送ることで、合併症のない人生を全う出来るよう、専門医やかかりつけ医だけではなく、看護師・薬剤師・管理栄養士など様々な医療スタッフが連携して皆様をサポートしています。