保健の窓

痛風・高尿酸血症の最近の話題

鳥取赤十字病院 検査部 塩  宏

夏の痛風予防―ビールの飲み過ぎに注意を

 ある日突然、足の親指の付け根などが赤くはれ、激烈な痛みに襲われる痛風。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2010年に「痛風で通院中」と答えた人は全国で95万7千人。1986年の25万4千人から4倍近くまで増加しました。 痛風は、以前は40代以降の中年男性がかかる病気でしたが、近年食生活を中心とした生活習慣の変化から30代の若い世代の痛風患者が急速に増えて、若年化しました。また、そのベースにある高尿酸血症の頻度は30代では30%に達しています。 通常、血液中の尿酸値が1デシリットル当たり9ミリグラム以上になると痛風を起こす危険性が高くなります。 高尿酸血症は、高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリック症候群などの生活習慣病を合併していることが多く、尿酸値の上昇が生活習慣病と重なることにより、脳、心血管の動脈硬化が進み易くなります。 高尿酸血症の要因として①食生活の内容の変化。すなわち動物性脂肪、インスタント食品やファストフードを多く摂取②過剰なストレス➂運動不足④飲み過ぎ⑤肥満など-挙げられます.夏は消費量が上がるビールなどの飲み過ぎで痛風発作の発症がピークに達しますので高尿酸血症を指摘されている人は注意が必要です。

 

 

 

 

非薬物療法としての生活指導

 生活指導として,食事療法,飲酒制限,運動の推奨などが挙げられます。食事療法では適正なエネルギーの摂取, プリン体や果糖の過剰摂取の制限が重要です。プリン体の多い食材,例えばレバーなど動物の内臓や、魚の干物などを大量にあるいは、頻繁に食べないようにすることも大切です。 飲酒に関して,ビールなどの醸造酒には、尿酸塩の原料になるプリン体が比較的多く含まれています。しかし、ビールを控えて蒸留酒にしても飲酒量が増えれば同じ結果を招きます。お酒の飲み過ぎが一番悪いのです。血清尿酸値への影響が少ない目安としては,日本酒1合/日,ビール500mL/日,ワイン200mL/日,またはウイスキー60mL/日程度と考えらます。 またウオーキングなど適度な運動を30分以上行うことやストレスを解消することです。肥満は血清尿酸値の上昇および痛風発症の危険因子の1つです。したがって,各栄養素のバランスのとれたエネルギー制限食と運動療法により,肥満を解消することです.尿酸値を1デシリットル当たり6ミリグラム以下に保つのが理想的です。 今年は猛暑のようです。脱水になると痛風を再発しやすいので、1日2リットル以上の水分補給をしてください。