保健の窓

生活習慣病を予防して血管を若く保つ~上手に動脈硬化を予防するには~

鳥取県医師会常任理事 天野道麿

 

「成人病」は加齢に着目した名称でありますが、小児にも発症することより、生活習慣を見直すことで病気の発症を予防しようという考え方で、「生活習慣病」という名称が提唱されました。

生活習慣病の代表的なものに高血圧、糖尿病、高脂血症があります。これらの疾患は食事の偏り(カロリー、脂肪、糖質、塩分、アルコール等の摂取過剰、野菜不足)、運動不足、ストレス過剰等の不適切なライフ・スタイルが背景にあります。また、これらの疾患が徐々に動脈硬化症を進行させ、働き盛りで脳梗塞、心筋梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症等を併発することになります。

平成14年度の鳥取県の市町村の基本健診の結果によりますと、異常者の割合(要指導と要治療の合計)は高血圧(男性41.5%、女性38.3%)、糖尿病(男性20.8%、女性12.3%)、高脂血症(男性35.8%、女性49.6%)となっています。高脂血症がトップで、特に女性では2人に1人が高脂血症といった現状です。2位は高血圧で、男性に限れば60歳以降ではトップとなっています。全国では約3,300万人が高血圧とのことですが、きちんと適正な管理をされている人は20~30%とのことです。最近は家庭血圧を測定される人が増え、約3,000万台の家庭血圧測定器が普及しており、健康管理に一役買っています。

糖尿病に関しては、平成14年11月の糖尿病実態調査によりますと、糖尿病が強く疑われる人約740万人、糖尿病の可能性を否定できない人(予備軍)約880万人で合計約1,620万人と、成人の6.3人に1人が異常を指摘されています。特に糖尿病を併発すると高血圧、高脂血症とも管理区分がきびしくなります。

小児の食事の現状は①朝食の摂り方が少ない②間食、夜食が多い③糖分、脂肪が多い④インスタント食品、スナック食品が多い⑤食物繊維不足⑥肉が多く、魚が少ない⑦食塩が多い⑧偏食が多い。こういった現状では、ますます生活習慣病や予備軍が増加します。味の好み、硬さの好み、間食の習慣、偏食、朝食抜き、夜食の習慣もほとんどが幼児期にすり込まれます。従って、幼児期からの正しい食習慣、運動習慣を身につけることが動脈硬化の発症予防、進展防止になります。動脈硬化症の初期変化は、10歳代の小児の98%に認められます。

国民栄養調査の結果によりますと、カロリーはほぼ適正とされていますが、米類の摂取が減少し、脂肪や動物性食品の摂取が増加しています。若い世代では食生活がかなり乱れています。

一方、運動については、運動習慣のある人の割合は、全体としてみると少しずつ増加してきています。しかし、1999年の調査の結果によりますと、60歳以上では男性女性とも30%を超えていますが、30歳代では男性20.8%、女性13.4%と低率です。

このような生活習慣の実態をみますと、若い世代に重点を置いた健康教育が必要と思われます。特に両親等、血縁の方に生活習慣病がある場合は、より一層の日常生活の注意が必要となります。そうしないと、今後ますます生活習慣病は増加すると思われます。

わが国では、米食に依存する食形態が基になり日本食として発達しています。しかし、食生活が西欧化した現在、今一度食生活を見直して、米を主食として、豆類、野菜、魚を中心とした日本食の良さを再確認して、健康な体の保持増進に努めて下さい。健康こそ人間にとって宝です。