保健の窓

生活習慣病としての糖尿病の予防と合併症について

鳥取県医師会常任理事 天野道麿

~今や糖尿病患者は予備軍も含めて成人6.3人に1人~

「生活習慣病」は1996年、生活習慣を見直すことによって病気の発症を予防しようとのことで提唱された名称です。

生活習慣病の代表的なものに糖尿病があります。2002年11月に実施された糖尿病実態調査によりますと、糖尿病患者は約740万人、糖尿病予備軍は約880万人で合計1,620万人(成人6.3人に1人)となっています。前回の調査(1997年)と比較して約250万人増加しています。

今後、視力障害や血液透析など、糖尿病の合併症のためにQOLが障害され、日常生活の制約を余儀なくされる患者さんが増加することが予想されます。糖尿病は国民の健康を考える場合、避けて通れない問題となっています。

わが国の糖尿病増加の背景として①経済の発展、②労働の機械化による身体活動の低下、③食生活の欧米化(米類の摂取が減り、牛乳・乳製品、肉類、油脂、卵の摂取の増加)、④肥満(糖尿病発症と関連の深い[BMI 25kg/㎡以上]の割合は、男性の30~60歳代で30%、70歳代で21%に達している。女性では50歳代で25%、60歳代で30%に達している。)、⑤精神的ストレス、などが考えられます。

以上のようなわが国の生活習慣の実態をみると、国民全体を対象とした生活習慣の改善が必要と思われます。特に、若い世代に重点をおいた健康教育が必要です。

また、健康診断を受けることが糖尿病の早期発見につながりますので、健康診断は是非受けるようにして下さい。健康診断の結果、異常があれば放置しないで精密検査を受けて下さい。そうすることにより健康管理がうまくでき、バラ色の人生が保証されます。

糖尿病患者の増加に伴って、糖尿病の合併症を併発する患者さんが増加しています。自覚症状が乏しいだけに、治療継続の動機付けに手を焼くことが多い糖尿病。だが、治療を中断することにより糖尿病の合併症が進行してしまえば、その後の治療はより難しくなり、QOLの低下も避けられません。糖尿病と喧嘩しないで一生、仲良く付き合うことが大切です。

網膜症、腎症、神経障害は糖尿病の三大合併症と呼ばれています。これらは細小血管ないしは小血管に生じた病変によって引き起こされることから、細小血管症と呼ばれています。

一方、大きな血管の病変によって生じる脳血管障害、心筋梗塞、末梢動脈閉塞症(壊疽)などは大血管症と呼ばれています。糖尿病では高頻度に発症し、かつ重症化し易いことがわかっています。

糖尿病網膜症は、失明の原因の第1位となっています。網膜症をおこしても初期の段階(単純網膜症)であれば、血糖コントロールにより進行を食い止めることができます。症状がなくても定期的に眼底検査を受けて下さい。

糖尿病腎症による慢性腎不全のために血液透析が導入される患者さんが増加しています。現時点で、糖尿病腎症を見つける最も重要な検査は、微量アルブミン尿の検査です。3~6ヵ月に1回はこの検査を受けて下さい。

糖尿病神経障害は末梢神経の知覚神経(痛みや、熱い冷たいなどの感覚を伝える)自律神経(無意識に内臓の働きや発汗をコントロールする)に多く見られます。早期発見のためには神経機能・心電図検査を受けて下さい。

合併症を予防するためには、HbA1c6.5%以下、血圧130/85mmHg以下とし、体重、血清脂質のコントロールも必要となります。主治医は患者さん自身です。