保健の窓

生活習慣病としてのがん予防

鳥取県立中央病院内科部長 秋藤洋一

 

健康を脅かす重大な病気の中には、その発症や経過に「生活習慣」が大きくかかわっているものが少なくありません。生まれもった「体質]や「加齢」は避けることはできませんが、生活習慣は自分で変えることができます。

生活習慣病としては糖尿病、高血圧、心臓の病気、脳卒中などが有名ですが、意外とがんが生活習慣病であることは知られていません。そこで今回は生活習慣病としてのがんを取り上げ、予防対策に重要なライフスタイルのポイントを紹介いたします。

がんを引き起こす原因には色々ありますが、食べ物、たばこ、アルコール、感染症、職業などがあげられます。たばことがんの関係はあまりにも有名ですが、すべての人に関係があって関わりの深いものはなんといっても毎日の食事で、がんの原因の3分の1に関係するといわれています。

発がん危険度の高いものの代表は「塩分」です。塩分自体は発がん物質ではないのですが、がんの発生しやすい環境を作ってしまいます。胃がんはその代表といえます。次に危険度の高いものに「脂肪」があります。最近、大腸がんが増加した原因として脂肪のとりすぎがあげられます。

その他に、アルコール、肉や魚のタンパク質が焦げてできる発がん物質、食品添加物、自然の食品に含まれる発がん物質などがあげられます。

一方で、食べ物の中には発がんを抑えるものもあります。食物繊維は便通を良くし、高脂肪食の害を減らし大腸がんを予防します。にんじん、かぼちゃ、ピーマンなどの緑黄色野菜に含まれる「カロチン」やビタミンCは抗酸化作用によりがんを抑制するものの代表です。

紙面の関係で今回はここまでですが、詳しくは公開講座でお話いたします。

がん予防12か条

前回の話をまとめたものに「がん予防12か条」があります。
1.バランスのとれた栄養をとる。
2.毎日変化のある食生活を。
3.食べすぎを避け、脂肪は控えめに。
4.お酒はほどほどに。
5.たばこはやめる。
6.緑黄色野菜をたっぷりととる。食べ物からビタミンや食物繊維を多くとる。
7.塩辛いものは少なく、熱いものは冷ましてから食べる。
8.肉や魚の焦げた部分を避ける。
9.かびの生えたものに注意。
10.日光に当たり過ぎない。
11.適度にスポーツをする。
12.体をいつも清潔に。

実際に、わが国で行われた調査で、がんを促進するといわれる、たばこ、アルコール、肉食と、がんを抑制する緑黄色野菜を摂ることでがんの危険度に60%もの差が認められています。若い人の細胞は入れ替わりが早く、そのぶん傷つきやすくもあり、早くから良い生活習慣を身につけることが大切です。

最後に、良い生活習慣を身につけたからといって、がんがまったく無くなるわけではありませんので、次の予防として早期発見、早期治療のための健診受診も大切なことです。