保健の窓

生活習慣改善しよう-糖尿病と上手に付き合う-

鳥取県医師会常任理事 天野道麿

 

厚生労働省は、2008年4月から保険者に特定健診・特定保健指導の実施を義務づけその準備を進めています。これは、糖尿病等の生活習慣病の有病者、予備軍の増加に対応して、生活習慣病の発症予防に力を置いたものであります。

最近、メタボリックシンドロームという言葉をよく聞かれると思いますが、これは内臓に脂肪が蓄積して、検査でHDLコレステロールが低下したり、血糖値、血圧、中性脂肪などが少し高くなり、それらが複数重なった状態を言います。メタボリックシンドロームに対しては、不健康な生活習慣(不適切な食生活・運動不足・ストレス過剰等)の改善が必要です。腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の方は要注意です。腹囲を1cmでも減らす努力をして下さい。

糖尿病治療の目標は体重・血圧・血糖・血清脂質の良好なコントロールを保って、糖尿病の重症化・合併症(失明・人工透析等)の予防を図り、健康な人と変わらない日常生活が送れることです。

糖尿病の食事療法では、自分に適した1日のカロリー摂取量を知ることが第一歩です。標準体重〔身長(m)×身長(m)×22〕×〔25~35kcal〕で計算して下さい。軽い仕事の人は25kcal、普通の仕事の人は30kcal、力仕事をする人は35kcalを掛けて下さい。この一日のカロリーを朝食、昼食、夕食で均等に分けて食べることが大切です。

糖尿病の運動療法では、やや速めの歩行(時速5km)で1日30~40分間、週3回以上、できれば毎日がお勧めです。運動することによりインスリンの働きが良くなり、血糖値を下げる効果が期待できます。しかし他に病気がある場合にはかかりつけの医師に相談をしてからにして下さい。


 

厚生労働省の2002年の糖尿病実態調査では、糖尿病と糖尿病予備軍の数は合計1,620万人と報告されています。

糖尿病の怖さは、さまざまな合併症を併発することにあります。網膜症による失明は年間3,500人以上、腎症による新規人工透析導入は年間13,000人以上、壊疽による下肢の切断も年間3,000人以上になっています。

糖尿病と診断されなくても、正常より血糖値が少し高い状態でも、動脈硬化は進行しており心筋梗塞や脳梗塞を発症し易い状態となっています。従って血糖値が少し高い糖尿病予備軍の時期から食事療法、運動療法を行い、3ヶ月に1回は診療を受け検査をされることが望ましいです。

糖尿病腎症の場合、尿蛋白陰性でも尿中微量アルブミンの検査で初期の腎症も発見することができ、腎症の進展防止に役立ちます。

糖尿病網膜症は、進行すると失明することもあります。しかし初期の変化であれば血糖コントロールによって正常化できます。少し進んだ病変でも、適切な時期にレーザー光凝固療法を行えば比較的よい視力を保つことができます。

糖尿病の合併症を併発しても、早期に発見し治療を行えば、進行を食い止めることができます。そのためには医療機関で定期的な検査を受けることが必要です。

糖尿病の合併症を予防するためには、血糖コントロールが重要です。空腹時血糖値129mg/dl以下、食後2時間血糖値179mg/dl以下を目標として下さい。さらに過去1~2ヶ月間の血糖値の平均値を示すHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)の値を6.4%以下に目標を置いてください。

糖尿病と上手に付き合うには、治療を中断することなく定期的に診療を受け、合併症を併発しないで健康な人と変わらない生活を送ることです。