保健の窓

生活習慣としての運動 ―生き生きとした老後のために―

ウェルフェア北園渡辺病院 日笠親績

運動は生活習慣病を予防する

日本人の平均寿命は男性77歳、女性84歳とまさに世界一の長寿国となっています。しかしながら、長寿を喜んでばかりもいられず少子化ともあいまって高齢者の医療費や年金の問題がクローズアップされているもの事実です。年をとれば病気とは縁が切れず、身体的にも精神的にも老化は避けて通ることのできない問題と思われています。はたしてそうでしょうか。心も体も健康な状態で長寿をまっとうしたいものです。

生活習慣病という名前がよく知られるようになりました。高血圧、糖尿病、高脂血症、脳卒中、虚血性心臓病(きょけつせいしんぞうびょう)などを含む病気の総称として名づけられたものです。実はこの生活習慣病の予防や治療が健康な長寿のためにもっとも重要なことなのです。健康な老後を送るためにはこの生活習慣病を予防することがもっとも近道となります。

しかしこれには秘薬はありません。予防薬は生活習慣の改善しかないのです。これらの生活習慣病に含まれる病気はおのおのが単独で起こってくるのではなく互いに関連しあって病気を引き起こしてくることがわかってきています。高血圧、糖尿病、高脂血症などはお互いが病気を誘発しあっていると考えられます。その原因のひとつが肥満と運動不足です。運動は肥満を解消するだけでなく実際に血圧や血糖を下げたり善玉のコレステロールを増加させたりします。多くの生活習慣病の予防と治療の基本は食生活の改善と運動療法です。次週は、日常生活における運動について触れてみたいと思います。

ウオーキングのすすめ

多くの生活習慣病の予防や治療には食事療法と運動療法が重要です。近くにでかけるのもついつい車に乗ったり、階段を使わずエレベーターやエスカレーターに頼っていませんか。私たちの身の回りには便利なものが氾濫し多くの人が運動不足に陥ってしまっています。一方、食品はふんだんにあり過栄養になっています。肥満になる要因は充分そろっています。食生活の注意とともに運動を日常生活化することが必要です。意識して運動することが必要な社会になっています。

運動には短距離走やウェイトトレーニングのような無酸素運動と散歩、軽いジョギング、エアロビクスのような有酸素運動があります。生活習慣病の予防や治療には有酸素運動が適しています。なかでも早足散歩がもっとも簡便で、安全で有効です。1日30分週3日以上(できれば毎日)の早足散歩をお勧めします。早足は人によって違うと思いますが楽と感じるないしはややきついと感じる程度の速さを目安とします。もう少しきっちりとしたければ運動時の脈拍が138-年齢/2 になるくらいの速度を目指してください。断続的な運動よりも連続して20分以上の運動をしたほうが脂肪の燃焼効率がいいですのでできれば散歩の時間をきちんととって運動されることをお勧めします。外に出かけて周囲の風景や季節感を味わうことでストレスの発散にもなると思います。毎日の運動が生き生きとした老後に結びつくと思います。