保健の窓

生活「悪」習慣病「日々の努力で避けられる」

西部医師会員 細田庸夫

 

我が国の死因は、がんを含めた生活習慣病が大部分です。外来や入院の患者さんも、生活習慣病が最も多い病気です。

以前成人病と呼ばれていたものが、なぜ生活習慣病になったか、考えて見ました。「成人病」では、「年を経ると、誰でもなる病気→努力しても無駄」と受取られます。そこで、「生活習慣病」とすれば、「生活習慣が原因→生活習慣を改善すれば避けることが出来る→それじゃ、努力してみようか」となります。

私は生活習慣病ではなく、生活「悪」習慣病が正しい日本語と思っています。ちなみに、認知に障害がある人を「認知症」と呼ぶようになりました。本来なら、認知不全症や認知不能症とすべき病態ですが、これでは以前の痴呆症よりもどぎつい表現になります。

生活「悪」習慣病の最大の問題は、生活「悪」習慣の多くは快楽であり、生活「良」習慣の大部分は苦痛を伴うことです。新幹線の長い階段を上るのは苦痛です。エスカレーターを利用するのは快楽そのものです。京都駅の新幹線ホームへの階段には、「修学旅行生は階段を上れ」の看板があります。私も大賛成で、若い時代から歩く習慣を付けておくべきです。

楽しいことでも、毎日実行することは辛いことです。好きでもないことを毎日実行するのは、数日で実行不可能となります。厚生労働省が勧める「歩こう等」の運動も、日常生活の延長から始めないと長続きしません。駅のエスカレーター等、国土交通省が進める「国民を歩かさないサービス」は、なるべく利用しないようにしましょう。

市町村は健康講座をたくさん開いています。残念ながら、参加されるのは生活「良」習慣の人が大部分で、生活「悪」習慣に染まった人の参加は稀です。

私は色々な会合で、「健康講座等を聴講して、生活習慣に気をつけて、努力している人には、健康保険料の減免等、何かメリットを提供し、生活『悪』習慣に浸り、何の努力をしていない人と、扱いに差を付けるのがよい」と発言しています。残念ながら賛同者は居られません。

次回は具体的な「お勧め」を載せます。


 

では、私のお勧めを具体的にお伝えします。

生活習慣病のことは、先ずかかりつけ医に相談しましょう。よいかかりつけ医とは、患者さんの生活習慣をよく知って、その改善のアドバイスをしてくれ、医療以外のことでも相談出来、病気の背景も考えてくれる医師です。永六輔氏によれば、同じ悩み、同じ病、同じ趣味を持った医師が望ましいとのこと。

次には健診と検診を受けましょう。生活「悪」習慣病のほとんどが、無症状です。言い換えれば、「何の症状も無い」は「病気が無い」ではありません。

60歳を過ぎたら、無病息災の方は稀です。「多病息災」で生き抜くことが必要です。そのためには、基本健診と各種がん検診等を受けましょう。

厚生労働省が勧める「動きましょう」は、先ず日常生活の中で始めることがコツです。好きでもないことを毎日実行するのは苦痛を伴い、長続きしません。

そこで、今より少し速足で歩きましょう。若く見られます。歩幅を少し大きくしましょう。元気に見えます。エスカレーターやエレベーター等の文明の利器はなるべく避けましょう。日常生活で運動習慣を身に付け、自信がわいてきたら、本格的運動を始めましょう。

生活「悪」習慣病にならない行動は、「その内に」ではなく、今日直ぐに始めましょう。